ポリメチルペンテン(TPX®)による生産ライン用オーダーメイド容器・トレー

※写真はポリメチルペンテン(TPX®)を使用した耐蒸気(120℃)・耐マイクロ波(電子レンジ)用の食品開発トレー

食品業界における生産ラインは、この十数年で大きな変化を遂げてきました。自動化・効率化・省人化が急速に進み、ロボットや搬送装置が当たり前のように稼働するようになった現在、ライン上で使用される容器やトレーにも従来とは異なる役割と性能が求められています。

しかし、一般的に流通している容器やトレーは規格品が中心であり、素材もPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などが多く使用されています。これらは安価で成形もしやすい一方、高温殺菌や耐薬品性に課題を抱えており、「オートクレーブやレトルト処理に耐える特殊な容器が欲しい」「ロボット搬送に適合した専用トレーが必要」といったニーズには応えにくいのが現実です。

こうした背景の中で注目される素材が、三井化学が製造するポリメチルペンテン(TPX®)です。TPX®は高耐熱・高透明性・軽量性・耐薬品性といったユニークな特性を持ち、食品生産現場での課題を解決できるポテンシャルを備えています。

私たちフジワラケミカルエンジニアリングでは、このTPX®を用いて、既製品にはないオーダーメイドの容器やトレーを製作する技術を確立してきました。本稿では、食品生産ラインにおけるTPX®の有用性と、オーダーメイド製作によって開かれる新たな可能性について解説します。

TPX®(ポリメチルペンテン)の特性と食品分野での適合性

まずはTPX®の素材特性について整理しておきましょう。

TPX®の素材特性

  • 耐熱性:200℃以上の高温環境でも安定。オートクレーブ滅菌やレトルト殺菌に適応。
  • 透明性:可視光透過率が高く、中身の視認性が確保できる。食品状態の確認に有効。
  • 軽量性:比重0.83と、汎用樹脂の中でも特に軽い。搬送効率に貢献。
  • 耐薬品性:酸・アルカリ・油脂に強く、繰り返し洗浄が可能。
  • 離型性:内容物が付着しにくく、食品搬送や成形後の取り出しで有利。

これらの特性は、食品生産現場が直面する以下の課題に直結して役立ちます。

食品生産現場で解決可能な課題

  • 高温殺菌工程で容器が変形する
  • 洗浄や消毒で容器が劣化する
  • 食品がトレーに付着して搬送がスムーズに進まない
  • 中身の確認に時間がかかる

さらに、他素材との比較でTPX®の優位性がより鮮明になります。

他素材との比較におけるTPX®の優位性

PPやPEはコスト面では有利ですが、耐熱性が100〜120℃程度に限られるため高温殺菌には不向きです。PETは透明性に優れるものの繰り返しの加熱や薬品処理に弱く、長期利用には適しません。その点TPX®は「透明性と耐熱性を両立する」稀有な素材であり、食品業界のニーズに最も近い特性を備えているのです。

材料耐熱性透明性耐薬品性・耐久性特徴・課題
PP(ポリプロピレン)約100〜120℃半透明洗浄や消毒で劣化しやすい安価で成形しやすいが、高温殺菌には不向き
PE(ポリエチレン)約100〜120℃半透明(低透明)薬品には比較的強いが、耐熱は低い軽量・安価だが、高温処理工程では変形の恐れ
PET(ポリエチレンテレフタレート)約70〜90℃高い透明性繰り返し加熱や薬品処理に弱い外観確認には有効だが、耐久性に課題
TPX®(ポリメチルペンテン)200℃以上高い透明性酸・アルカリ・油脂に強い、長期利用可能「透明性と耐熱性を両立」する稀有な素材で食品ラインに最適

射出成型品の限界と生産ラインのニーズ

現在市場に出回っているTPX®製品の多くは射出成型品で、メスシリンダーや計量カップといった理化学・研究用途が中心です。射出成型は大量生産に適している反面、以下のような制約があります。

射出成型品の限界
  • 規格サイズしか存在しない
  • 容量や深さを自由に設定できない
  • ロボットハンドやライン機器との適合性を考慮できない
  • 加工後の微調整や少量対応が困難

つまり、生産ラインが抱える「特殊サイズのトレーが必要」「搬送効率を上げるため専用形状が欲しい」といったニーズには対応できません。

一方で、生産現場からは次のような具体的な要望が頻繁に寄せられます。

生産ラインのニーズ
  • オートクレーブやレトルト殺菌後でも形崩れしないトレーが欲しい
  • ロボットが確実に掴める専用リブや形状を備えた搬送トレーが欲しい
  • 食品サンプルを一定容量で分けて処理できる専用容器が欲しい

こうした要望を実現するには、射出成型に依存しない柔軟な製作技術が必要となります。

活用事例のイメージ

TPX®を用いたオーダーメイド容器・トレーは、実際の食品生産ラインに導入されることでどのような効果を生むのか――ここでは代表的な事例を紹介します。どれも実在顧客名は伏せていますが、現場の課題解決につながった具体的なイメージとしてご覧ください。

事例
レトルト食品メーカー
  • 課題:既製トレーは高温殺菌で変形し、製品形状が崩れる。
  • 導入:TPX®トレーをオーダーメイドし、補強リブ構造を追加。
  • 結果:形崩れが解消し、外観品質が安定。歩留まりが向上。
事例
冷凍食品ライン
  • 課題:規格品トレーはロボットが掴みにくく、ライン停止の原因となっていた。
  • 導入:ロボットハンドに最適化した専用トレーを製作。透明性により異物確認も容易に。
  • 結果:搬送停止が激減し、品質保証体制が強化。
事例
研究開発ライン
  • 課題:新製品試作で既製容器のサイズが合わず、検証作業が遅延。
  • 導入:必要容量に合わせた特殊寸法容器を短納期で提供。
  • 結果:試作スピードが向上し、開発リードタイムが短縮。

これらの事例から分かるのは、TPX®オーダーメイド容器が単なる「代替素材」ではなく、品質保証・生産効率・開発スピードの向上に直結する現場改善ツールであるという点です。既製品では実現できなかった領域にこそ、TPX®の強みが最大限に発揮されるのです。

フジワラケミカルエンジニアリングのオーダーメイド製作力

私たちフジワラケミカルエンジニアリングは、プラスチック精密溶接や加工技術を強みに、TPX®素材を用いたオーダーメイドの容器・トレー製作を実現しています。

  • 自由設計対応
    規格に縛られず、容量・寸法・深さ・リブ形状を自在に設計可能。
  • 耐熱・耐薬品対応の溶接加工
    TPX®の特性を損なわない精密溶接技術で、強度と透明性を両立。
  • ロボット・自動化ラインへの適合
    ハンドリングしやすい形状や、ライン上で安定する寸法設計を実現。
  • 小ロットから量産まで柔軟に対応
    試作1点から複数ライン向けの製作まで、現場ニーズに合わせた展開が可能。

さらに、半導体や化学プラント向け装置製作で培った高精度な加工ノウハウを活かし、食品分野においても「壊れない」「崩れない」「扱いやすい」容器・トレーを提供できるのが当社の強みです。

まとめ

TPX®はその優れた素材特性から、食品生産ラインにおける「高温処理」「衛生性」「透明性」「軽量性」といった要件を満たす理想的な樹脂です。しかし、既製の射出成型品では生産現場の細かな要望に対応できません。

フジワラケミカルエンジニアリングは、オーダーメイド設計と精密加工技術によって、食品業界の生産現場に最適な容器・トレーを提供しています。

「既製品では合わない」「高温処理で形が崩れてしまう」「ロボット作業に対応できない」――そんな課題をお持ちの方は、ぜひ一度TPX®オーダーメイド容器の可能性をご検討ください。

私たちは伴走者として、食品業界の未来を支える容器づくりを共に実現します。そして、このTPX®オーダーメイド技術こそが、食品生産ラインの次の10年を支える基盤になると考えています。
私たちは伴走者として、食品業界の未来を支える容器づくりを共に実現します。