食品工場の作業をもっと確実に、もっとスムーズに:PET加工品による現場改善とメリット
食品工場では、毎日同じ工程を繰り返しているようでいて、実は細かい条件が常に変わり続けています。気温、湿度、材料の状態、作業者の動き──こうした些細な差が、作業性や品質に影響を与えることは少なくありません。
日々、同じように見えるライン作業でも、材料の状態が「昨日と同じ」とは限りません。気候の変化や設備の稼働時間によって、粉の湿り具合がわずかに変化したり、製品の滑りや反発が違ったりします。作業者自身の動作の微妙な違いも積み重なれば、製品の流れや安定性に影響し、時に「なぜか今日は詰まりやすい」「なぜか今日は流れが悪い」といった現象を引き起こします。
そのため現場では、「既製品ではうまくいかない」「あと少しだけ形が違えば便利なのに」という悩みがしばしば発生します。こうした「現場ならではの悩み」が積み重なるほど、改善の余地は確実に存在していると言えます。
こうした現場ならではの悩みを解決する素材として、近年注目されているのが PET(ポリエチレンテレフタレート)加工品です。PETは飲料ボトルにも使われるおなじみの樹脂ですが、食品工場の道具としても多くの強みを持っています。特に透明性・安全性・加工性に優れ、既製品では解消できないピンポイントな課題に対応できる柔軟性があります。
食品工場でPET素材が選ばれる理由
PETの特徴をひと言でたとえるなら、
「透明で丈夫なレゴブロック」。必要な形に自由に組み替えられる素材。
この比喩は、PETの持つ加工性と構造の自由度をとてもよく表しています。レゴブロックは用途や目的に合わせて自由な形に組み替えることができますが、PET加工品もまさに同じです。透明で丈夫でありながら、工程に合わせて形状を細かく変えることができ、これが現場改善の大きな武器になります。
食品工場で重宝される理由は次の通りです。
- 食品安全性が高い(食品ポジティブリスト適合)
食材が触れる工程でも安心 - 透明で中の状態が見える
異物・詰まり・汚れのチェックがしやすい - 丈夫で加工の自由度が高い
角を丸くする、板厚を調整するなど“割れにくい形”に加工できる - 金属が使いにくいエリアでも活用できる
金属探知機の近くでもOK - 軽くて扱いやすい
作業者の負担が少ない
これらの特徴はすべて食品工場における「安全」「衛生」「効率」の改善に直接つながります。特に透明性は、「中が見える安心感」として作業者の判断スピードを上げ、工程を止めないための重要な役割を果たします。
PET加工品が現場改善にもたらす具体的メリット
ここでは、PET加工品がどのように改善効果を発揮するのか、現場で実際に起きていた課題と、その解決事例をまとめて紹介します。
改善事例①:粉ふるい工程の課題を解決する「専用メッシュトレー」
課題:既製メッシュトレーが工程に合わず流れが不安定
まんじゅう製造ラインの粉ふるい工程では、次のような問題がありました。
粉の粒度、湿度、製品の硬さ、レーンの高さ関係──これらの「複合的な条件差」が流れに影響し、既製品のままでは安定性を確保できない状況でした。わずかな違いが積み重なる食品工場では、こうしたミスマッチが大きなロスを生むことがあります。
解決策:中央だけメッシュ構造にした専用トレーをPETで製作
フジワラケミカルエンジニアリングでは、現場の寸法・作業動線を細かく確認し、次のような構造のトレーを製作しました。
製品の動きを理解した上で「現場専用の滑り台を作った」ような改善です。
既製品では決して実現できなかった「粉ふるい→自動搬送」の一連の流れが、自動的かつ安定して行えるようになりました。
改善事例② 詰まりが見える透明PETシューターで包装工程のトラブルを削減
課題:金属製シューターでは内部が見えず、詰まり発見が遅れる
包装工程では、従来の金属製シューターに次のような問題がありました。
包装工程はスピード重視であるため、詰まりの“早期発見”が極めて重要です。しかし金属製では内部状態が視認できず、「気づいたときにはラインが止まっている」状態を招きやすくなっていました。
解決策:透明PETで「中が見える」シューターをオーダーメイド
PETの透明性を最大限に活かしたシューターを制作したところ、次の改善が得られました。
金属製では不可能だった「内部の見える化」によって、判断スピードが大幅に向上し、ライン停止や製品破損といったロスが劇的に減少しました。
PET加工品を使うときの利点と注意点
食品工場の現場改善に活用できるPET加工品ですが、メリットと注意点を正しく理解しておくことで、より適切な設計・導入につながります。PETは扱いやすく、安全性も高い一方で、素材特性を知らずに設計すると割れやすくなったり、想定外の劣化につながることがあります。ここでは、導入を検討する際に押さえておきたいポイントを整理します。
PET加工品の利点
- 食品安全性が高い
食品に直接触れる工程にも投入できる衛生性・信頼性 - 中が見える安心感
透明性による詰まり・汚れ・異物付着の即時視認、判断速度の向上 - 割れにくい形状に設計できる
板厚調整やR加工による応力分散構造の実現、耐久性の最適化 - 軽量性による取り扱いの容易さ
洗浄・入れ替えなどが多い食品工場での作業負担の軽減 - 金属が使いにくい工程でも代替できる
金属探知機エリアや異物混入リスクの高い工程における安全な選択肢 - オーダーメイドによる「現場最適化」
既製品では対応しづらい微妙な寸法差・工程条件に対する最適設計と改善効果の最大化
PET加工品の注意点
- 透明ゆえの傷の目立ちやすさ
表面傷による視認性低下の懸念、取り扱い・洗浄方法への配慮 - 耐熱温度の限界(約60〜70℃)
熱湯消毒・高温スチーム工程への不適合、用途選定の重要性 - 形状による破損リスクと設計依存性
シャープな角形状や局所荷重による破損の発生可能性、R付け・肉厚最適化の必要性
ただし、これらの注意点は設計段階で多くが解決可能です。
板厚の最適化、補強リブの追加、応力を逃がすR形状の採用などにより、PET特有の弱点を補いながら安定した使用が実現します。
まとめ
食品工場におけるPET加工品の価値は、単に「素材として優れている」ことだけではありません。
大切なのは、現場の悩みや不便を正しく理解し、それらを踏まえて「最適な形に設計できる」点にあります。
粉ふるい工程の専用メッシュトレーも、透明PETシューターも、いずれも既製品では解決の難しかった課題でした。しかし、PETという素材の透明性・加工性・軽量性と、現場に合わせた細かな設計を組み合わせることで、作業性・品質・洗浄性・効率のすべてが向上しました。
PET加工品は、作業者の負担を減らし、製品品質を安定させ、生産ラインの流れをなめらかにする「小さな相棒」です。食品工場の改善において、今後もその活用場面は確実に広がっていくでしょう。
フジワラケミカルエンジニアリングが「現場と共に作る改善」
食品工場におけるPET加工品の本当の価値は、単に「素材が良い」ことだけではありません。
重要なのは、現場の悩みや困りごとを正しく受け取り、その状況に最もフィットする形へと「設計していける」点にあります。
粉ふるい工程の専用メッシュトレーも、透明PETシューターも、いずれも既製品では解決できなかった問題でした。しかし、PETの特性と当社の加工技術を掛け合わせることで、現場の動作・製品の動き・工程の癖に合わせた、より実践的な形へと進化させることができました。
私たちフジワラケミカルエンジニアリングが大切にしているのは、
「ただ物を作るのではなく、現場の『こうなったらいい』を形にすること」。
この姿勢こそが、当社が食品工場のお客様に長く選ばれてきた理由だと考えています。
透明で丈夫なPET素材は、その思いを形にするための大きな味方です。
中が「見える」安心感、衛生的で扱いやすい特性、そして何より現場に合わせて作り替えられる自由度。これらが組み合わさることで、食品工場の作業改善は、一歩ずつ確かな手応えを持って前に進んでいきます。
PET加工品は、作業者の負担を減らし、品質の安定を支え、生産ライン全体の流れをなめらかにする「小さな相棒」。
今後も当社は、現場の声を丁寧に聞き取りながら、加工技術と設計力を活かし、食品工場の課題解決に寄り添い続ける伴走者でありたいと考えています。

