当社のデジタルマーケティングの取り組みと一年間の実践記録

当社では2024年よりデジタルマーケティング施策を進めており、本記事では一年間の取り組みと成果、今後の方針についてお知らせいたします。


人口減少、既存顧客の変化、人材不足という三重苦の中で、中小企業はこれまで以上に「新しい出会い」をつくる力が求められています。とくに製造業では、これまでのつながりや展示会だけでは新規顧客の獲得が難しくなり、「どうやって技術を知ってもらうか」という課題は、すべての企業に共通する悩みになりつつあります。

私たちも例外ではなく、技術力には自信があっても、それを必要とする方々に届けきれていませんでした。そこで2024年11月、思い切ってホームページを全面リニューアルし、月8〜10本の技術コラムを継続発信する取り組みを開始しました。対象分野は半導体、食品、医療、農業、アクアポニックス、高機能プラスチック、溶接技術など、多岐にわたります。これらの分野それぞれに一次情報としての技術知見を蓄積し、「プラスチック加工によって現場の困りごとをどう解決できるか」を丁寧に発信していきました。

外部パートナーと進めた取り組みについて

この取り組みは、当社単独では到底実現できませんでした。SEOの専門家、デザイナー、分析のプロ、中小企業支援に携わるコーディネーター、業界に詳しいテクニカルアドバイザーなど、多様な外部専門家と対話しながら一歩ずつ形にしてきたものです。
なかでも、有限会社スラッシュディーの山本朝次氏には、全体構想の整理と継続的な実装支援を──
岡山県産業振興財団には、成長戦略を含めた包括的な経営支援・技術支援を通じて本取り組みを力強く後押ししていただきました。

中小企業にとって「デジタルの専門家を社内に置く」ことは現実的ではありません。しかし「外部の力とつながり、密にコミュニケーションを取りながら進める」ことで、足りない部分を補いながら前に進むことはできます。今回の成果は、まさにこうした外部パートナーとの協働によって生まれたものだと感じています。

技術コラムを継続した一年で見えた “数字” という成果

この一年間で、当社の検索パフォーマンスは明確に変化しました。

  • 年間検索クリック数:15,671回
  • 年間表示回数:768,000回以上
  • 主力キーワード(プラスチック溶接、PP加工、PVC切削など)で全国的な順位が上昇
  • コラムページ全体の流入が継続的に増加
  • 2025年11月のアクティブユーザー数:4,719人(2024年12月:930人から増加)
  • 一日の最大クリック数が100件以上の日も登場

比較のために、一般的にデジタル施策を行っていない企業の検索データを見ると、多くは年間1,000〜2,000クリックに留まります。つまり、技術情報を継続して一次情報として発信し続けた企業と、そうでない企業では、検索からの出会いの数が “10倍以上” 違うということです。これは中小製造業にとって決して小さくない差です。

デジタルでの出会いは数だけの話ではありません。コラムを通じて私たちの技術に興味を持ってくださったのは、これまでご縁のなかった業界の方々でした。農業(とくに養殖や植物工場)、食品工場、医療機器メーカー、アクアポニックス事業者、環境設備、プラントエンジニアリングなど、多様な分野からの問い合わせが増え、「こんな業界に当社の技術が役立つのか」という新たな気づきが生まれ始めました。

専門家不在の中小企業が、どのようにプロジェクトを進めたか

私たちが成果を上げられた大きな理由は、外部の専門家と “密に連携” しながら進めたことです。社内には専門家がいなくても、「外の知恵」を借りることで不足を補いながら走ることができました。

① 最初に “現状の棚卸し” を一緒に行う

自社だけでは見えづらかった課題を、第三者の視点で整理してもらいました。

  • 誰に向けて発信したいのか(ペルソナの明確化)
  • どのカテゴリーに強みがあるのか
  • 競合との違いは何か
  • 過去の記事で読まれているものは何か

「何をすべきか」ではなく「なぜそれをするのか」という軸から議論できたことが、後の発信の質に大きく影響しました。

② 月間テーマを “共通言語” のもとに整理

技術系企業の発信はテーマが広がりがちですが、外部パートナーとの対話を通して、

  • 半導体装置部品
  • 食品工場向け樹脂設備
  • 医療用高性能樹脂
  • 養殖・アグリテック
  • 溶接(PE/PP/PVC)技術の解説
  • 気密性・耐薬品性に関する素材比較

といった方向性を整理し、年間の発信計画をつくりました。

③ “読者目線” に立った記事づくりへ転換

外部の専門家から何度も指摘されたのが、「技術PRではなく、読者の困りごとから書く」という基本姿勢です。

その結果、記事の構成は次のように変わりました。

  • 自社の技術 → 読者の課題を最初に示す
  • 加工の説明 → 事例・活用シーンを明確化
  • 素材の紹介 → 使う側が判断できる比較情報へ

この転換が、検索からの流入増加につながりました。

④ 分析と改善を “継続” する文化が生まれた

デジタルは数字がすべてを教えてくれます。アクセス、滞在時間、検索クエリ、業界別の動きなどを、外部パートナーと毎月確認し、次の発信テーマや改善点を一緒に考えました。そのおかげで、

  • どの業界で反応があるか
  • どの素材の情報が求められているか
  • どのテーマが読まれ続けているか

が明確になり、無駄のない発信が続けられました。

多様な外部パートナーと作り上げた “共創型プロジェクト”

この一年で実感したことは、中小企業は外部の専門家との “共創” によって大きく変わるということです。特定の機関だけでなく、民間のプロ、専門分野のアドバイザー、地域の支援組織、デザイナー、解析の専門家など、複数の方々の知見が合わさることで、プロジェクトは大きな推進力を得ました。

「外の知恵を借りる」という姿勢は、決して弱みではなく、むしろ中小企業の強さになり得ます。必要なところに必要な専門性をスポットで組み合わせることで、大企業ではできないスピードと柔軟性を生み出すことができます。

コンテンツマーケティングは “入口” にすぎない。

この一年間で私たちが行ってきたのは、デジタル施策の中でも特に効果の高いコンテンツマーケティングの構築と運用です。
実際に、この期間で公開した技術コラムは100記事を超え、一次情報としての技術知見を体系的に蓄積する基盤が整いました。

しかしデジタルマーケティングの世界では、これはあくまで “入口” にすぎません。

コンテンツが蓄積されることで、

  • 検索データの読み取り精度の向上
  • 業界ごとの反応の把握
  • 問い合わせにつながるテーマの明確化

など、次の施策へ進むための材料が揃っていきます。

今後は、

  • SEO強化
  • 広告による関心層の獲得
  • SNS・メールによるリード育成
  • 展示会×Webの連動
  • 業界別LP整備
  • サイト導線の再設計
  • ホワイトペーパーによるリード獲得
  • ダウンロード後のメールナーチャリング

など、多段階の施策に取り組んでいく予定です。

今後の方針について

当社では、継続的な技術発信を基盤にしながら、

  • 情報発信の体系化
  • リード獲得施策の強化
  • 展示会とのハイブリッド連動
  • サイト構造・導線の最適化
  • データに基づく改善の継続

に取り組み、お客様との新しい接点づくりを進めてまいります。

外部パートナーからの支援に感謝しつつ、今後も製造業の課題解決に寄与する情報発信を続けてまいります。

デジタルに挑戦したい中小企業経営者の皆さまへ

最後に、私たちが一年間取り組んで感じた結論を共有したいと思います。

  • デジタルは難しいものではありません。
  • 完璧に始める必要はありません。
  • 専門家が社内にいなくても、プロジェクトは前に進みます。
  • 大事なのは「一緒に進む仲間を持つこと」です。
  • 外部の専門家と密にコミュニケーションを取りながら動けば、必ず成果が出ます。
  • 小さな成功を積み重ねれば、数字も、問い合わせも、認知も、確実に変わります。

これからデジタルを始めたい中小企業の皆さまへ、同じ経営者としてお伝えしたいことがあります。

一緒に実施していきましょう。
外の力とつながりながら、できるところから進めれば、必ず道は開けます。

代表取締役社長 杉本 剛久