【食品工場×ロボット】ロボット稼働率を上げるトレー設計3つの解決策:素材と加工の選び方
人手不足の深刻化に伴い、食品製造現場ではロボットによる自動化が急速に進んでいます。アームロボットによる盛り付け、移載、パレタイズなど、かつては熟練作業員が担っていた工程が機械化されつつあります。
しかし、最新鋭のロボットを導入したにもかかわらず、「チョコ停が減らない」「把持エラーが起きる」という悩みを抱える現場は少なくありません。
その原因の多くは、「容器(トレー)」にあります。
人間であれば、トレーが多少変形していても、熱で少し柔らかくなっていても、無意識に力加減を調整して持つことができます。しかし、ロボットは正直です。設定された座標に、設定された形状のワークがなければ、即座にエラーを吐いてラインを止めます。
本コラムでは、自動化ラインの稼働率を最大化するために必要な「ロボット適性」を備えた次世代トレーの設計について、3つの解決策に絞って解説します。
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食品工場ロボットが求めるトレーの3つの条件
まず、解決すべき課題を整理します。ロボットの安定稼働には、以下の3つの条件を満たすトレー設計が求められます。
- 形状安定性:熱や衝撃で変形せず、常に同じ寸法・座標にあること。
- 認識精度:カメラやセンサーが誤検知しない素材・形状であること。
- ハンドリング適性:ロボットハンドが確実に把持・吸着できる構造であること。
特に加熱殺菌(レトルト、スチームコンベクション、電子レンジなど)を伴うラインでは、熱によるトレーの「反り」や「軟化」が致命的になります。PP(ポリプロピレン)などの汎用素材では、加熱後にフランジが波打ったり、全体が歪んだりすることがあり、これがロボットハンドの吸着ミスや把持エラーの主因となります。
以下では、これら3つの条件をどう実現するか、素材と加工の観点から3つの解決策を示します。
解決策① PMP素材で熱変形と画像認識の課題を解消する
課題「形状安定性」と「認識精度」を素材の力で解決するアプローチです。
高温工程を含む自動化ラインにおいて、現在最も注目されているのがポリメチルペンテン(PMP / 通称TPX®)です。融点が230〜240℃と高く、電子レンジと過熱水蒸気の複合加熱環境下でも形状を維持する力が極めて高い素材です。
ロボット稼働への影響という観点から、3つのポイントを押さえておきましょう。
- 加熱後も寸法を維持し把持エラーを防止
ロボットがトレーを吸着、あるいはチャッキングする際、フランジ(縁)の平面度は命綱です。PMPは100℃を超える蒸気加熱後も変形しにくいため、フランジの波打ちを抑制でき、真空吸着のリークやメカハンドの掴み損ないを激減させます。 - カメラが迷わない高い透明性
画像認識でワークを検知する場合、トレーの白濁や光の乱反射はノイズになります。PMPはガラスに近い透明性を持つため、AI監視ラインとの相性も高く、内容物の充填レベルや異物をカメラで正確に捉えることができます。 - 食品が張り付かない離型性
食品がトレーにくっついたまま次工程へ移ろうとすると、ロボットが持ち上げた瞬間に食品が剥がれ落ちたり、トレーごと持ち上がったりするトラブルが起きます。
PMP採用時の注意点
材料単価は汎用のPPやPEと比較すると高くなります。ただし、ダウンタイム削減効果や歩留まり向上を含めたトータルコストで判断することが重要です。
また、激しい摩耗が起きる箇所には不向きなため、搬送ガイドなど摩耗が激しい部分には次の解決策②との組み合わせが有効です。
PMPの素材特性をより詳しく知りたい方へ
電子レンジ×過熱蒸気という複合加熱環境でPMPが選ばれる理由、PP・CPETとの比較については、以下の関連コラムで詳しく解説しています。
解決策② UHMW-PEで搬送トラブルをゼロに近づける
課題「ハンドリング適性」の前段、つまり「トレーがロボットのもとに正確に届く」ことを搬送ライン側から解決するアプローチです。
ロボットがトレーを掴む場所まで、スムーズにワークを流すことも重要です。金属製のガイドレールやシュートでは摩擦係数が高く、軽量な樹脂トレーが引っかかって滞留することがあります。ここで活躍するのがUHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)です。搬送ラインへの適用という観点から、3つのポイントを押さえておきましょう。
- 驚異的な滑りやすさで搬送をスムーズに
UHMW-PEは極めて低い摩擦係数(テフロン並み)を誇ります。搬送ガイドやプッシャーの先端に採用することで、トレーを「滑らせて」正確な位置に供給することが可能になり、ロボットのピックアップ成功率を底上げします。 - 削れない耐久性で異物混入を防ぐ
「白い鉄」とも呼ばれるほどの耐摩耗性を持ち、繰り返し接触しても削れ粉が出にくい素材です。金属ガイドと樹脂トレーの接触で発生しがちな摩耗粉のリスクを低減し、クリーンな環境を維持できます。 - 食品衛生法適合の安全性
多くのグレードが食品衛生法に適合しており、食品に直接触れる搬送ラインでも安心して使用できます。また、万が一削れても発見しやすい「青色グレード」や「金属検知グレード」を選定することで、食品安全対策を強化できます。
UHMW-PE使用時の注意点
耐熱温度が80〜90℃程度と低いため、加熱直後のトレーを受ける場所や、洗浄工程で熱湯がかかる箇所での使用には注意が必要です。熱膨張による寸法変化を考慮したクリアランス設計が求められます。
UHMW-PEの素材特性をより詳しく知りたい方へ
低摩擦・高耐摩耗という特性が搬送設備の長寿命化にどう貢献するかについては、以下の関連コラムで詳しく解説しています。
解決策③ オーダーメイド加工でロボット固有の要求に応える
解決策①②の素材を活かしながら、「ハンドリング適性」をさらに高めるのがオーダーメイド加工です。
市場に出回っている射出成型の規格トレーは、あくまで「人間が使うこと」を前提とした汎用サイズがほとんどです。「ロボットハンドの爪が掛かる切り欠きが欲しい」「センサー検知用の穴が欲しい」といったロボット特有の要求には応えられません。切削・溶接・熱曲げによるオーダーメイド加工が、その差を埋めます。
- 把持部を設ける精密な切削加工
ロボットハンドの爪形状に合わせて、コンマミリ単位でフランジの厚みを調整したり、把持用の溝加工を施したりします。これにより、汎用ハンドでも確実なグリップが可能になります。 - センサー用窓や仕切りの溶接
PMPなどの素材を用いて、センサーが透過するための透明窓を溶接したり、内容物が動かないように仕切り板を追加したりします。板材からの溶接加工であれば、金型不要で1個から試作・製作が可能です。 - 搬送用ガイドの現場合わせ
ラインの繋ぎ目やカーブなど、トレーが引っかかりやすいポイントに合わせて、UHMW-PE製のガイドを現物合わせで製作します。微妙な段差や角度を解消することで、チョコ停の原因を根本から絶ちます。
まとめ:トレーを「搬送インターフェース」として設計し直す
自動化ラインにおけるトレーは、単なる入れ物(消耗品)ではありません。ロボットのパフォーマンスを直接左右する「搬送インターフェース」として捉え直すことが、稼働率向上の第一歩です。
本コラムで紹介した3つの解決策を整理すると、以下のようになります。
- 解決策① PMP素材の採用
加熱後の形状維持と高い透明性により、把持エラーと認識ミスを根本から抑制する。 - 解決策② UHMW-PEの搬送ライン適用
低摩擦・高耐摩耗の特性でトレーの供給精度を高め、ロボットのピックアップ成功率を底上げする。 - 解決策③ オーダーメイド加工
素材の特性を活かしながら、ロボット固有の把持・検知要件にコンマミリ単位で対応する。
「ロボットが掴みにくい」「加熱工程でラインが止まる」という課題は、ロボット本体や制御プログラムではなく、トレーの素材と設計を見直すことで解決できるケースが多くあります。まずは現行トレーの素材と形状を再点検するところから始めてみてください。
よくある質問
食品ロボットに適した「次世代トレー」を導入すると、どのようなメリットがありますか?
最大のメリットは自動化ラインの稼働率向上です。熱変形しないPMP素材のトレーに切り替えることで、加熱後の把持エラーや吸着ミスが大幅に減少します。また、PMPの高い透明性はカメラによる画像認識の精度を高め、AI監視ラインとの親和性も向上します。さらに離型性に優れるため、粘着性の高い食品でもスムーズなハンドリングが可能です。短期的なコスト増よりも、ダウンタイム削減・歩留まり向上というトータルコストの改善効果の方が大きくなるケースが多くあります。
トレーの耐熱性と形状安定性は、ロボットの稼働率にどのように影響しますか?
ロボットは「決められた座標に、決められた形状のワーク」がなければ即座にエラーを出すという特性があります。汎用素材(PP等)のトレーが加熱で反りや変形を起こすと、ロボットハンドの吸着面がトレーと面接触できなくなり、真空リークや把持ミスが連続して発生します。その結果がライン停止であり、稼働率の低下です。PMP素材は100℃を超える加熱後も寸法を維持するため、ロボットのティーチングデータと実際のワーク位置のズレを最小限に抑え、稼働率の安定につながります。
食品工場での異物混入を防ぐために、トレー素材の選定で注意すべき点は何ですか?
異物混入対策として特に重要なのは「削れない素材を選ぶ」ことです。金属製のガイドと樹脂トレーが繰り返し接触すると、摩耗粉が発生し食品ラインに混入するリスクがあります。搬送ラインにUHMW-PEを採用することで、このリスクを大幅に低減できます。さらに、万が一の混入に備えて「青色グレード」(目視で発見しやすい)や「金属検知グレード」(金属探知機で検知可能)といった機能性グレードを選定することで、食品安全対策を多層的に強化することができます。
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