プラスチック加工会社が教える!失敗しない樹脂材料選定Q&A【現場で役立つコツを徹底解説】

製品設計や加工現場で「どの材料を選べば良いのか?」と悩むことはありませんか?
樹脂材料(プラスチック材料)の世界はまるで「洋服の生地選び」のように多種多様。
用途や目的に合わせて、ぴったり合うものを選ぶことが重要です。
このコラムでは、よく寄せられる「材料選定」に関する質問にQ&A形式で答えながら、実際の現場で役立つヒントやポイントをお伝えします。
樹脂材料選びの基本的な考え方は?
「TPO」に合わせた生地選びと同じ
プラスチック材料を選ぶときの基本は、「どこで」「何のために」「どんな環境で」使うかをはっきりさせることです。
これは、洋服を選ぶときに「今日は何をする日か」「どんな天気か」「フォーマルかカジュアルか」を考えるのと同じです。
- 使用環境(温度、湿度、薬品との接触など)をチェック
- 必要な強度や耐久性を整理
- コストや加工のしやすさも忘れずに

杉本 剛久
冬の寒い日にTシャツ1枚では風邪をひきますし、フォーマルな場にジャージで行くと浮いてしまいます。材料も「その場にふさわしい」ものを選びましょう。
代表的な樹脂材料の特徴を教えてください
「生地のカタログ」をイメージしよう
代表的なプラスチックの性格を、服の生地に例えてご紹介します。
樹脂材料 | 特徴 |
---|---|
PP(ポリプロピレン) | ● 軽くて水に強い、普段着のポリエステルシャツ ● 食品業界や薬品容器によく使われる |
PVC(塩化ビニル樹脂) | ● 汚れに強いレインコート ● 水回りや配管、耐薬品性が必要な用途に |
PE(ポリエチレン) | ● 柔らかく、扱いやすいトレーニングウェア ● 衝撃に強く、医療・食品用途にも |
POM(ポリアセタール) | ● しっかりしたスーツ ● 精密部品やギアなど、寸法精度が必要な場面で活躍 |
ナイロン(PA) | ● 丈夫なアウトドアジャケット ● 機械部品や高強度を求める用途に |
PVDF(ポリフッ化ビニリデン) | ● 高級な防水・防汚コート ● 半導体や薬品プラントなど過酷な環境で |

杉本 剛久
それぞれの「得意分野」を知り、TPOに合った材料を選ぶことが大切です。
「耐薬品性が必要」と言われたら、樹脂材料をどう選ぶ?
「傘の生地」を思い出してみましょう
傘の生地も、安価なものはすぐに水が染み込む一方で、高級傘は水をよくはじきます。
プラスチックも同じく、材料ごとに得意な薬品・苦手な薬品があります。
- PP、PE、PVDF:多くの酸やアルカリに強い
- PVC:一般的な薬品には強いが、一部有機溶剤に弱い
- POM、ナイロン:薬品によっては侵されやすい
- 実際に接触する薬品名をリストアップ
- メーカーの耐薬品性表をチェック
- 不明な場合は、テストピースで実験

杉本 剛久
「薬品」と一口に言っても、濃度や温度、時間によって影響が変わるため、細かい条件まで確認が必要です。
「強度が欲しい」とき、どの樹脂材料を選ぶ?
「登山用ジャケット」を選ぶ感覚で
強度や耐衝撃性が必要な場合は、アウトドア用の分厚いジャケットや登山靴を選ぶのと同じく、「耐久性」「耐摩耗性」「衝撃に強いか」に注目しましょう。
- ナイロン(PA)、POM:高強度、高耐摩耗性で機械部品向き
- PE(特にUHMW-PE):高い衝撃吸収性、摩耗しにくい
- PP:軽量でそこそこの強度

杉本 剛久
強度だけでなく、柔軟性や温度特性も考慮しないと、「固すぎて割れやすい」「寒さで脆くなる」といった失敗も起きます。
「コスト」と「性能」はどうバランスを取ればいい?
「高級ブランドとファストファッション」の違い
プラスチック材料もピンからキリまで。「予算内で最大限の性能」を引き出すことが大切です。
- 高性能材料は高価だが、必要以上だと「オーバースペック」
- 標準グレードで十分な場合も多い
- メンテナンスコストや寿命も含めて「トータルコスト」で判断
- 半導体装置など高い耐薬品性・耐熱性が求められる → PVDFやPTFEなど
- 日常的な食品トレイ → PPやPEで十分

杉本 剛久
普段使いにはTシャツで十分。
パーティーには少し良い服を選ぶように、用途ごとにコストと性能を見極めましょう。
「現場で加工しやすい樹脂材料」はどれ?
「手縫いしやすい生地」と同じ発想
材料によって、加工のしやすさが全く異なります。
「切る・曲げる・溶接する」など、現場の作業性も大切なポイント。
- PP、PE:切断や溶接が容易。現場加工にも向く
- PVC:溶接しやすいが、加熱時のガスに注意
- POM、ナイロン:切削やねじ加工はしやすいが、溶接には不向き
- 厚みや形状によっても加工性は変わる
- 複雑な形状が必要な場合は、3Dプリントや成形加工も選択肢

杉本 剛久
加工現場で「失敗しにくい材料」を選ぶことは、作業のストレス軽減や納期短縮にもつながります。迷ったときは、まず「扱いやすさ」から検討してみましょう!
「食品・医療」分野では、どんな樹脂材料を選べばいい?
「清潔な白衣」や「衛生的なキッチンツール」をイメージ
食品や医療分野では、「安全性(食品衛生法適合・FDA認証など)」や「洗浄しやすさ」が大切です。
- PP、PE:多くの食品容器・医療用部品に使用可
- PVDF:高い耐薬品性と衛生性で医薬分野に
- PTFE(フッ素樹脂):耐熱性・非粘着性も抜群
- 認証取得済みの材料かどうかを必ず確認
- 現場での洗浄・殺菌方法に適合するかもポイント

杉本 剛久
食品や医療の現場では、「安全第一」が何よりも大切。認証取得済みの材料を選ぶだけでなく、実際の洗浄や殺菌のしやすさも必ずチェックしておきましょう。
「帯電防止」「導電性」が必要な場合の樹脂材料選びは?
「静電気防止スプレー」や「ゴム底の靴」と同じ考え方
精密機器や電子部品の現場では、静電気対策が欠かせません。
- 帯電防止グレードのPP、PE、PVCなど
- カーボンを配合した導電性樹脂
- 帯電防止効果には寿命がある(表面処理の場合は特に)
- 使用環境(湿度、摩擦頻度)によって効果が変動

杉本 剛久
「どのくらいの帯電防止レベルが必要か」を明確にしておきましょう。
「リサイクルや環境対応」の視点で樹脂材料を選ぶには?
「エコバッグ」や「リユースボトル」を選ぶ感覚
最近は「環境負荷の少ない材料」を選ぶ流れが加速しています。
- PP、PEはリサイクル適性が高く、再生材も豊富
- 特殊材料はリサイクルしにくい場合がある
- 現場での分別・再利用の仕組みも重要

杉本 剛久
「どのゴミ箱に分けて捨てるか」を考えるように、最初からリサイクルを見越して材料選びをすると◎
「樹脂材料選定」で困ったときは?
「料理のレシピ本」や「プロに相談」
材料選びに迷ったときは、一人で抱え込まず、専門家のアドバイスや現場テストを活用するのが最も確実です。
- 材料メーカーや加工業者に相談
- サンプルやテストピースでの現場テスト

杉本 剛久
「百聞は一見にしかず」。現場の条件や実際の使い方を伝えて、一緒に最適な材料を探しましょう。
まとめ
材料選定は「洋服の生地選び」のようなもの。
TPO(使う場所・用途・環境)をよく整理して、各材料の得意分野や注意点を押さえれば、失敗は大きく減らせます。
- 用途・環境・コスト・加工性を整理
- 材料ごとの特徴と「できること・できないこと」を把握
- 必要に応じてプロに相談
これらのポイントを意識し、最適な材料選びに役立てていただければ幸いです。
今後も皆さまの「お困りごと」や「ご質問」に、Q&A形式で分かりやすく答えていきます。
ご意見・ご質問もお待ちしています!