廃液処理設備に求められる耐薬品性と、私たちが提供できる「現場発の付加価値」

化学・電子・リサイクル・金属精製などの産業現場では、日常的に強酸・強アルカリ・有機溶剤などの薬液や廃液が扱われています。これらは人体や機械設備にとって危険なだけでなく、腐食性が非常に高いため、設備の材質や構造には厳しい要求が課されます。

廃液を安全かつ効率的に処理・保管するためには、単なる耐薬品性だけでなく、現場の運用やメンテナンスのしやすさまで含めてトータルに配慮した設計が不可欠です。その「守り役」として、耐薬品性に優れたプラスチック材料が広く活用されています。

本コラムでは、フジワラケミカルエンジニアリングが得意とする耐薬品性プラスチックの選定や加工技術、そして現場ヒアリングを通じた改善事例をご紹介します。

廃液処理に適したプラスチック材料の選定

廃液や薬液といっても、その性質はさまざまです。同じ種類の酸でも、濃度や温度、混ざっている成分によって最適な材料は異なります。さらに、清掃や運用の方法、現場の温度環境、求められる耐久性なども、設備の寿命を大きく左右する重要な要素です。

ここでは、廃液処理設備によく使われる代表的なプラスチック素材と、それぞれの特徴についてご紹介します。

材料名特徴・用途
PP(ポリプロピレン)軽くて扱いやすい汎用プラスチック。酸やアルカリに強く、コストも安いため、廃液タンクや配管など幅広い設備で使用されています。
PVC(ポリ塩化ビニル)日常の水道管などでも使われる、耐薬品性と加工性に優れた素材。価格も手ごろですが、高温や衝撃にはやや弱い一面もあります。
PVDF(ポリフッ化ビニリデン)化学プラントなどで使われる高機能樹脂。高温や有機溶剤にも強く、過酷な薬液環境でも長寿命が期待できますが、コストは高めです。
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン/フッ素樹脂)「テフロン」としても知られる、最も耐薬品性に優れたプラスチック。ほぼすべての薬品に耐え、非粘着性や耐熱性も抜群ですが、加工は難易度が高くなります。

カタログやデータシートで選ぶだけではなく、実際の運用・メンテナンスの現場を把握することが重要です。たとえば「洗浄時のスチームで想定外の劣化が進んだ」「複数薬品が混合される運用で、表面の変色やクラックが発生した」など、素材選定の失敗が後のトラブルに直結するケースも珍しくありません。
現場で何が起きているかを知り、運用に即した提案を行うことが、トラブル回避と設備長寿命化のポイントです。

廃液処理設備で失敗しない設計・素材選定のポイント

廃液処理設備は、単に「耐薬品性のある素材」を選べば安心、というものではありません。現場での運用方法やメンテナンスのしやすさ、安全性まで含めて考えることで、長寿命でトラブルの少ない設備につながります。

①廃液・薬液の種類や条件を正確に把握する

廃液と一口に言っても、含まれる成分・濃度・pH・温度などは現場ごとに大きく異なります。とくに複数の薬液が混ざるケースや、時間帯・工程ごとに廃液の性質が変わる現場では、どのような条件下で設備が使われるのかを事前に洗い出すことが重要です。
想定外の高温や強酸・強アルカリ、溶剤成分などが混入することで、素材の劣化やトラブルの原因になる場合があります。

②清掃・メンテナンスの実態まで考慮した設計に

廃液処理設備は、定期的な清掃やメンテナンスが不可欠です。
高圧洗浄や薬品洗浄など、現場ごとに異なる清掃方法を考慮して、それに耐えられる素材・構造を選ぶ必要があります。
また、分解・点検がしやすい設計や、排出口の配置・部品交換のしやすさを工夫することで、トラブル発生時の対応力や設備全体の安全性が高まります。

③現場スタッフの声や運用課題を取り入れる

設計段階だけでなく、実際に設備を使う現場スタッフの要望や、過去に発生したトラブル事例を反映させることが失敗防止の近道です。
たとえば「液面が見えにくい」「誤操作しやすい」「清掃が手間」といった現場の“困りごと”は、透明素材や色分け・表示の工夫で改善できます。
小さな配慮の積み重ねが、現場で本当に役立つ廃液処理設備につながります。

④コストだけで判断しない

初期コストを抑えるために安価な素材を選ぶと、思わぬ劣化や漏れ・腐食が発生し、結果的に修理や交換で余計なコストがかかることも少なくありません。
「耐久性」「安全性」「メンテナンスのしやすさ」まで含めて、長期的なコストメリットを重視した素材・設計の選定が重要です。

過去の廃液処理設備における製作・改善提案事例

廃液処理設備の導入やリニューアルにあたっては、実際の現場から寄せられる声や課題をもとに、数多くの工夫や改善提案が生まれています。
ここでは、当社がこれまでに手がけた主な事例をいくつかご紹介します。

実績
実験室用の排液分離槽

小規模な研究施設や分析室で、複数の薬液を安全に分離・排出できる槽を製作。流路を透明素材で可視化し、混合や逆流、異常時の発泡・変色も目視で確認できる設計にすることで、現場スタッフの不安を解消しました。

実績
中和処理プロセス向け段階槽

工場や製造現場の廃液中和工程で、「手作業による操作ミス」や「排液の滞留」が課題となっていたため、槽内に仕切り板を追加し、排出口の位置を調整。これにより中和反応が均一になり、作業効率と安全性が大幅に向上しました。

実績
薬液タンクの素材変更提案(PVC→PP)

長期間の使用でPVCタンクが白化や微細な漏れを起こしていた現場に対し、より耐薬品性の高いPP素材に切り替えを提案・製作。頻繁な修理が不要になり、設備全体の信頼性がアップしました。

実績
液面視認性向上のための透明化加工

廃液タンクや槽の液面が見えにくく、「過充填」や「液切れ」のリスクがあった現場に、部分的な透明窓や全体の透明素材を採用。現場での誤操作や手間が減り、安全性・作業性の両立につながりました。

実績
配管・接続部の構造改善

廃液処理の配管で詰まりやすい・清掃しづらいという声を受け、取り外しやすいジョイント構造・点検口の追加などを提案。メンテナンス性が向上し、作業負担も大きく軽減されました。

いずれも、「図面通り」ではなく、現場で実際に使う方の声や課題から生まれた改善策です。
当社では、廃液の安全な取り扱いと作業効率・メンテナンス性の向上を両立させるため、今後も現場の視点を重視したご提案を続けていきます。

おわりに:設計図だけでは解決できない現場の価値

設備は設計図通りに作れば良い、という時代ではありません。使う人の立場に立って細かな課題に耳を傾け、現場の本音や最新トレンドを反映させることが、今後ますます重要になっていきます。

フジワラケミカルエンジニアリングは、設計部門こそありませんが、メーカーやエンジニアリング会社からの図面をもとにした高精度な製作はもちろん、現場で実際に使用する方々の声や運用課題をしっかりヒアリングし、改善提案や素材選定のアドバイスを行ってきました。

たとえば、薬液や温度環境を考慮した素材のご提案、作業性や視認性向上のための透明材や色分けの活用、パーツ構成や接続方法の見直しによるメンテナンス性の向上など、現場の課題解決に向けた具体的なご提案も強みです。

SDGsや省人化、作業負担軽減など社会的な要請も高まる中、「現場の声」と「プロの加工技術」を掛け合わせた“現場発の付加価値”をこれからも追求していきます。

耐薬品性プラスチック製品や薬液槽の製作・改善に関するご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。