プラスチック素材で遊びと防災の新提案「浮かぶプール」:保育園向けPE・PP水槽

~ PE・PP水槽が、保育園にできること ~
夏の園庭に響く子どもたちの笑い声と水しぶき。その一方で、現場の保育士は水遊びの準備や安全管理、後片付け、防災対策まで幅広い責任を抱えています。
近年は猛暑日が増え、屋外遊びの安全確保は年々難しくなる一方です。さらに、津波・洪水などの自然災害リスクも地域によっては無視できません。
私たちが提案するのは、産業分野で実績のあるPE(ポリエチレン)・PP(ポリプロピレン)製の水槽をベースにした「浮かぶプール」。
普段は楽しい遊び道具、非常時は命を守る浮舟──「丈夫で安全な水遊び道具」×「いざという時の防災ツール」の一台二役の新しい設備です。
本記事は構想段階の用途開発アイデアです。実証・製品化は未実施であり、設計・運用には法令や安全基準の確認が必要です。
保育園の現場が抱える課題と背景
多くの園ではビニール製や簡易組立式のプールを導入しています。価格が手頃で軽量、設置が比較的簡単というメリットはあるものの、現場の声を拾うと次のような課題が浮かび上がります。
- 耐久性の限界
ビニールプールは尖った物や擦れに弱く、破損や空気漏れが起こりやすい。数シーズンでの買い替えが必要になることも多く、コストが積み重なります。 - 運用負担の大きさ
毎回の設置・水張り・水抜き・清掃・乾燥・収納が保育士の負担に。特に日差しの強い中での作業は体力的にも厳しく、時間的にも保育業務を圧迫します。 - 防災設備不足
津波や河川氾濫といった水害が発生した場合、園児を安全に避難させる手段が限られている施設が少なくありません。 - 限られた予算とスペース
防災用資材を別に導入しようとしても、予算・保管スペースの制約が大きな壁になります。
このように、日常の楽しさと安全性、さらに非常時の備えを同時に満たす設備は、現状ほとんど存在していません。ここに、プラスチック製の「浮かぶプール」という新たな解決策の可能性が見えてきます。
PE・PP水槽が遊具として適している理由
PE・PP製の水槽は、もともと農業や工業分野で使われることを前提に設計されてきました。
そのため、日常的な屋外使用や重量物の保持にも耐える高い耐久性が標準仕様です。これらの性能を保育の現場に持ち込むことで、既存の遊具では得られなかった「長く安全に使える安心感」を提供できます。
項目 | 特性 |
---|---|
比重 | 0.91〜0.96(水に浮く特性) |
耐衝撃性 | 落下や衝撃にも割れにくい |
耐薬品性 | 塩素系洗浄剤や消毒液にも耐える |
耐候性 | 屋外での紫外線や雨風にも強い |
加工性 | サイズ・形状を自由に設計可能 |
カラー | 青・黒・白など選択可能 |
こうした素材特性は、保育現場の条件や安全基準と非常に相性が良く、日常利用にも非常時利用にも適応可能です。
- 軽量かつ頑丈:移動しやすく、長期間使える
- 安全設計が可能:角を丸くし、滑らかな仕上げでけがリスクを減らす
- スペース適応性:低床型やテーブル型など園の環境に合わせた設計が可能
- 多用途性:水遊び以外にも教材収納や洗浄槽として活用可能
これらの要素を組み合わせることで、日常の遊び道具としての魅力と、防災資材としての実用性を兼ね備えた「二刀流」の設備が実現します。
非常時に「命を運ぶ」浮舟として
「浮かぶプール」の最大の特徴は、防災資材としても使えることです。災害時に浮力と安定性を活かして園児を安全に避難させる「浮舟」として機能します。
- 避難経路の確保:浸水時に園児を安全な場所へ運搬
- 安定性を重視した形状:底面を広くし、転覆リスクを低減
- 追加安全機能:紐通し穴、蓋付き構造、浮力材の追加
防災設備を日常的に使用する機会はほとんどありませんが、この発想なら「普段は遊具、非常時は避難具」という活用が可能になります。
色彩・衛生・景観への配慮
水槽の安全性や機能性はもちろん大切ですが、保育現場ではそれに加えて見た目や衛生面の印象が子ども・保護者・地域への信頼につながります。
園庭や屋内の雰囲気、既存設備との調和を損なわないことも導入の重要な条件です。
PE・PP水槽は、色や仕様を柔軟にカスタマイズできるため、機能性だけでなく美観や衛生感にも配慮できます。
- 青:水遊びらしい明るさと清潔感を演出
- 黒:屋外での耐候性向上と景観への調和
- 白・グレー:衛生設備や室内環境との統一感
色だけでなく、利用シーンや園の方針に合わせて機能的なカスタマイズを施すことで、日常の使いやすさと長期的な安全性をさらに高められます。
- 蓋付き仕様:虫や落ち葉の侵入防止、水たまり対策
- 名入れ・ロゴ刻印:園のオリジナリティや所有感を高める
- ノズル取付:排水や循環システムの組み込みに対応
このように、機能性に加えて色彩や衛生面を考慮し、カスタマイズを組み合わせることで、園児や保護者が安心して利用できる「顔の見える設備」へと進化させることができます。
導入までの流れと補助金活用
「浮かぶプール」は遊具としての楽しさと、防災資材としての備えを同時に実現できるため、導入効果が高いのが特徴です。
しかし、単に製品を購入するだけではなく、現場の条件に合わせた計画的な導入プロセスが必要になります。
- 現場ヒアリング:敷地条件や用途を確認し、設置環境を把握
- 設計提案:安全性・利便性を考慮した設計案の提示
- 試作・小ロット製作:実際の利用シーンを想定した段階的導入
- 納品・設置:目安3週間〜(応相談)
さらに、自治体や各種制度を活用すれば、費用負担を抑えながら導入を進めることも可能です。
- 自治体・文科省の防災設備導入補助金
- 私立園設備更新支援制度
- 地域連携によるクラウドファンディング
導入フローと資金計画を組み合わせることで、現場に無理なく導入できる道筋が描けます。単なる新設備の購入ではなく、園全体の安全性と運営効率を高める投資として位置づけられるでしょう。
まとめ:日常の遊びに防災を組み込む
日常的に使う設備に、防災という機能を付加する。これが「浮かぶプール」の最大の価値です。
PE・PP素材の耐久性と加工自由度を活かし、遊び・学び・安心を一つにつなぐ── これからの保育現場に必要な新しい発想です。
遊びの中に、防災を。
普段づかいの中に、「備え」という安心を。
構想段階ではありますが、今後は試作・実証を経て、現場での実用化を目指します。