透明プラスチックと紫外線(UV光)の関係を科学する:透過とカット、使い分けのポイント

その中で、アクリルやポリカーボネートといった代表的な透明プラスチックの違いや、素材選びの際に押さえておきたいポイントを解説しました。

今回のコラムでは、さらに一歩踏み込み、「紫外線(UV光)」に特化して、透明プラスチックと紫外線の関係を詳しくご紹介します。
前回は主に「可視光」に焦点を当てましたが、実は「紫外線」との相性も、透明プラスチック選定には非常に重要な要素です。

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    紫外線とは? ~可視光と紫外線の違い~

    まず最初に、紫外線(UV光)について簡単におさらいしましょう。

    紫外線とは

    紫外線とは、波長がおおよそ100〜400nmの「電磁波」を指します。
    人間の目では直接見ることができませんが、日焼けや樹脂劣化など、生活や産業に大きな影響を与える存在です。

    紫外線はさらに、波長によって次のように分類されます。

    波長による紫外線の分類
    • UV-A(320〜400nm)
      地表に届く紫外線の約95%。比較的エネルギーは弱いが、長時間浴びると劣化や老化の原因に。
    • UV-B(280〜320nm)
      エネルギーが強く、皮膚や材料に対するダメージが大きい。日焼けの主因。
    • UV-C(100〜280nm)
      オゾン層でほとんど吸収され、通常は地表には届かないが、殺菌灯など人工光源では使用される。

    可視光との違い

    可視光(400〜700nm)は、私たちが「光」として見ている領域です。
    紫外線はそれよりも波長が短いため、エネルギーが高く、物質との相互作用も大きく異なります。

    可視光の波長

    可視光(400〜700nm)
    この範囲の光は色として認識され、異なる波長の光が異なる色として見える。

    このため、透明プラスチックにおいても、可視光と紫外線とでは透過性や吸収性が大きく違ってきます。

    プラスチックとUV光:吸収する? 透過する?

    では、透明プラスチックは紫外線に対してどのような反応を示すのでしょうか?
    ここでは代表的な素材ごとに整理します。

    アクリル(PMMA)

    アクリルは、標準グレードであっても自然にUV-BやUV-C領域を吸収する性質を持っています。
    そのため、屋外看板やウィンドウパネルなどでも長期間透明性を保ちやすい特長があります。

    特に波長280nm以下のUV-C領域では、ほとんど紫外線を通しません。

    ただし、UV-A領域(320nm以上)はある程度透過するため、UV硬化装置カバーなどでは、UV透過グレードのアクリルが使われることもあります。

    ポリカーボネート(PC)

    ポリカーボネートは高い衝撃強度を持ちますが、標準品では紫外線にやや弱く、UVによる黄変や劣化が発生しやすい素材です。

    このため、屋外用途や長期使用を前提とする場合、UVカットコーティングを施したグレード(例:UVプロテクトパンライト®)が一般的に使われます。

    その他の透明プラスチック

    透明プラスチックでは、食品・医療・建設業界などで、以下の素材もよく使われています。

    • PET/PETG:比較的紫外線に弱く、屋外用途には向かない。
    • PVC:コスト重視だが、紫外線劣化が早いため、短期用途向き。

    加工時の注意:表面仕上げとUV透過

    アクリルやPCを切削・研磨した際の白濁は、主に可視光散乱の影響ですが、表面状態が荒れていると紫外線の透過率にもわずかながら影響を及ぼします。

    特に精密なUV硬化や分析用途では、表面の平滑性も重要な要素になります。

    UVカットとUV透過、どちらが必要? ~用途別の考え方~

    透明プラスチックのUV特性は、用途によって「カット」が必要な場合と「透過」が必要な場合に分かれます。

    UVカットが必要な用途

    光学的な美しさや耐候性が求められる場面では、紫外線の遮断が重要です。屋外看板や窓ガラス、展示ケースなどでは、紫外線による黄変や劣化を防ぐためにUVカット樹脂が選ばれます。医療機器のカバーでも、透明度と耐久性を維持しながら紫外線を防ぐことが求められます。

    UVカットが必要な用途
    • 屋外広告看板・窓ガラス
    • 博物館・美術館の展示ケース
    • 医療機器のカバー

    UV透過が必要な用途

    紫外線を通す必要がある場面もあります。UV硬化装置のカバーや育成用ランプの照明カバーでは、紫外線透過が必須です。紫外線分析機器の窓材でも、UV-BやUV-Aを透過させる専用の素材が使用されます。

    UV透過が必要な用途
    • UV硬化装置のカバー
    • 育成用ランプや水耕栽培用の照明カバー
    • 紫外線分析機器の窓材

    ここで重要なのは、「透明だからといってUVを通すとは限らない」ということです。

    例えば、見た目はきれいな透明アクリルでも、実はUV-Bはカットされている場合があります。
    一方、UV硬化に使う場合は、専用の「UV透過アクリル」や「UV透過PC」を選定する必要があるのです。

    UV透過グレード・カットグレードの選び方

    加工用の透明プラスチックには、用途ごとに求められるUVカットやUV透過の機能に応じたグレードが用意されています。
    適切なグレードを選ぶことで、光学性能や耐候性を最大限に引き出すことが可能です。

    UVカット特化型プラスチック

    • パンライト®(UVプロテクトタイプ)(帝人)
    • アクリライト™耐候グレード(三菱ケミカル)

    UV透過特化型プラスチック

    • CLAREX UV透過アクリル(日東樹脂工業)
    • UV透過ポリカーボネート(特殊グレード)

    選定のポイント

    透明プラスチックのUVカットやUV透過グレードを選定する際には、目的に応じた性能を正確に見極めることが重要です。特に紫外線の透過や遮断が必要な場面では、選定基準が異なります。以下のポイントを押さえておくことで、適切な素材を効果的に活用できます。

    透明プラスチック選定のポイント
    • 使いたい紫外線の波長領域(UV-Aだけ?UV-Bも必要?)を明確にする。
    • 紫外線だけでなく、耐衝撃性、加工性、コストもバランスよく考慮する。

    まとめ:透明プラスチック選定時のUV設計ポイント

    今回のコラムでは、透明プラスチックと紫外線(UV光)の関係について、基礎から応用まで整理しました。

    最後に、選定時に押さえておきたいポイントをまとめます。

    透明プラスチック選定時のUV設計ポイント
    • 透明プラスチックは、見た目の透明度だけでは性能はわからない。
    • 目的に応じて、「紫外線を遮る」か「紫外線を通す」かを選び分ける。
    • 必要に応じて、専用のUV透過グレード・UVカットグレードを選定する。
    • 波長域(UV-A、UV-B、UV-C)にも注目する。

    透明プラスチックは、一見同じように見えても、紫外線に対する挙動には大きな違いがあります。
    用途や目的に応じた素材選びを意識することで、より製品性能を高めることができるでしょう。

    今後も、透明プラスチックの可能性をさらに広げるための知識や活用方法について、
    引き続きわかりやすくご紹介していきますので、ぜひご期待ください。

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