【技術コラム】現場の「見えない」を解消する新世代透明PP「FORTENA」の活用事例
── はじめに:PPタンクをFORTENAが変える
日本のものづくり現場において、PPは「最も信頼できる」素材の一つです。特に強酸や強アルカリを扱うウェットプロセスでは、その安定性は他の追随を許しません。しかし、エンジニアの皆様なら一度はこう思ったことがあるはずです。
「この壁の向こう側が、もし透けて見えたなら……」
これまでの不透明なPPタンクは、いわば「ブラックボックス」でした。内部で薬液がどのように対流し、どこに気泡が溜まり、どれほど汚れが蓄積しているか。私たちはそれを、外部センサーの数値や過去の経験値から「推測」するしかありませんでした。
エフピコ社が開発した透明PP「FORTENA」は、この課題に正面から答える素材です。PPが本来持つ耐熱性・高純度・耐薬品性を維持しながら、内部視認を可能にしたFORTENAは、「透明度か耐性か」という長年の二者択一を終わらせます。
ここでは、現場での具体的な活用事例を5つ紹介します。
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事例① 【計測】「外付けセンサー」による完全非接触モニタリング
効果:薬液に一切触れずに、液位・気泡・液色をリアルタイム数値化
半導体や精密化学の現場では、センサーを薬液に浸すこと自体がコンタミリスクとなり、センサー寿命を縮める原因にもなります。
タンクの側壁の一部にFORTENAを溶接し、外部にカメラ・レーザー液面計・色彩センサーを配置することで、壁越しに内部を視認しながら非接触での監視が実現します。「センサーを液に漬ける」という固定概念を捨て、外側から画像解析AIで監視するシステムを構築すれば、メンテナンス工数は劇的に削減できます。
事例② 【解析】「流動とデッドゾーン」のダイレクト検証
効果:対流の様子をハイスピードカメラで捉え、設計へ即座にフィードバック
流体解析(CFD)ソフトの進化は目覚ましいですが、実際の配管の曲がりやノズルの噴射状況による「生」の挙動は、計算通りにはいきません。
洗浄槽の仕切り板・バッフル板・薬液ガイドにFORTENAを採用すると、タンク本体が不透明でも内部パーツが透明であるため、視線を遮ることなく対流を観察できます。どこに気泡が溜まるか、どこが「デッドゾーン(滞留域)」かを可視化し、設計品質の向上につなげることができます。
事例③ 【保全】「替え時」を可視化する状態基準保全(CBM)
効果:「数値(差圧)」に「視覚(汚れ具合)」のエビデンスを加え、メンテナンスサイクルを最適化
水処理プラントや大規模なろ過装置において、フィルターの交換は「時間」や「差圧」で決めるのが一般的でした。しかし、これではまだ使えるフィルターを廃棄したり、詰まりかけで無理に運用したりするロスが生じます。
フィルターハウジングのカバー、ストレーナーの分岐部、薬品注入ラインの合流点にFORTENAを配置すると、内部の汚れ・スカムの発生・ろ材の膨張具合を作業員が「一目見て」判断できるようになります。
事例④ 【衛生】洗浄工程(CIP)のクリーン度を可視化
効果:洗浄液が隅々まで当たっているかを直接確認し、HACCP対応を強化
食品・飲料メーカーにとって、洗浄の妥当性確認は極めて重要です。
粉体ホッパーの出口、CIP液の戻りライン、スプレーボールの散布範囲が見える位置にFORTENAを設置することで、残液の溜まりや洗浄の死角を直接確認できます。PVCでは耐えられない高温の苛性ソーダ洗浄にも、PP素材であれば対応可能です。
事例⑤ 【安全】異常予兆を超早期に捉えるセーフティ・カバー
効果:微細な滲み・変色・発煙を壁越しに視認し、遠隔24時間リーク監視を実現
化学プラントの現場において、リーク(漏洩)の早期発見は安全管理の要です。
配管フランジ接合部の防護カバー、二重殻タンクの外壁、バルブユニットの覗き窓にFORTENAを採用すると、万が一の異常を安全な防護壁越しに視認できます。不透明なPPカバーでは発見が遅れる微細な異常も、カメラ監視と組み合わせれば遠隔地から24時間体制でのリーク監視が可能になります。
FORTENAが可能にする「ハイブリッド設計」
FORTENAの最大の強みは、既存の不透明PPと熱溶接ができることです。ボルトやパッキン、接着剤を介在させることなく、PPタンクの一部を透明化できます。
堅牢な厚物PPタンクに、FORTENAを「窓」として溶接するだけで、シール部からの漏洩リスクを一切排除した「高信頼性・高視認性タンク」が完成します。「不透明PPの堅牢さ」と「FORTENAの透明性」、二つの長所を一つのタンクに組み合わせるこの設計思想こそが、現時点での最適解といえるでしょう。
関連ページ:透明PP「FORTENA」の溶接加工について
参考:主要素材スペック比較
| 特性項目 | PVC(塩化ビニル) | 標準PP(ポリプロピレン) | FORTENA(透明PP) |
| 透明度 | 非常に高い(クリア) | 不透明(乳白色) | 高い(内部視認が可能) |
| 耐熱温度 | 約60℃(熱に弱い) | 約90℃以上 | 約90℃以上 |
| 純度(低溶出) | 添加剤・可塑剤の懸念 | 非常に高い | 非常に高い(低溶出) |
| 耐薬品性 | 有機溶剤に弱い | 非常に高い(溶剤にも強い) | 非常に高い |
| 比重(軽さ) | 1.4(重い) | 0.9(軽い・浮く) | 0.9(軽量) |
| 接合方法 | 接着・溶接 | 熱溶接のみ | 熱溶接(PPと一体化可能) |
| 開発元 | 各種メーカー | 各種メーカー | 株式会社エフピコ |
おわりに
「中が見える」ということは、単なる安心感のためではありません。プロセスを支配し、改善し、最適化するための「究極のデータ」を得る手段です。
「この部分が透明だったら、もっと良くなるのに」──そんな直感とアイデアを、ぜひ私たちに聞かせてください。素材の提供だけでなく、溶接技術や設計ノウハウを含めて、共に未来を創っていきたいと願っています。
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