地方から日本をもう一度、動かす:フジワラケミカルエンジニアリングが考える「これから」
── 新年の幕開けに考える「地方から日本を動かす力」
2026年を迎え、新しい一年が始まりました。
そして本稿は、フジワラケミカルエンジニアリングが連載してきた
技術コラムの「101回目」としてお届けする最初の一歩でもあります。
昨年、100本のコラムを通じて見つめてきたのは、
地方の現場に眠る課題と、その向こう側に広がる可能性でした。
半導体・食品・医療・アグリテック・環境対応──
多様な産業に触れながら、
「技術をどう活かし、誰とつなぎ、未来をどう描くか」を問い続けてきました。
100という節目を越えて迎えるこの新年は、
私たちにとって「区切り」ではなく「始まり」です。
地方企業として何ができるのか。
技術はどこへ向かうべきか。
日本の産業が直面する変化に、どう応えていくのか。
その問いに向き合いながら、私たちは改めて確信しました。
地方には、まだ無数の可能性がある。
そして地方からこそ、日本をもう一度動かす力が生まれる。
本コラムでは、100本の発信で得た視座を踏まえつつ、
フジワラケミカルエンジニアリングが2026年に挑む
「新しいものづくりのあり方」と
「地方発イノベーションの未来」についてお伝えします。
新たな一年の幕開けに、
そして101本目のコラムにふさわしい、
未来へのメッセージをここに記します。
「地方には仕事がない」と言われる時代に
「地方には仕事がない」「若者が戻らない」──
そんな言葉を聞くたびに、私は違和感を覚えます。
本当に、地方に「仕事がない」のでしょうか。
実際のところ、地方には無数の課題があります。
産業構造の変化、後継者不足、人材の流出、デジタル化の遅れ。
しかし、私はそれを「問題」ではなく、「可能性」と捉えています。
課題があるということは、解決すべきテーマがあるということ。
そして、そのテーマに挑む人がいれば、新しい仕事が生まれます。
地方が元気を失っている本当の理由は、
「仕事がない」のではなく、「仕事を生み出す仕組みが止まっている」ことです。
かつての日本では、地方こそが創意工夫の場でした。
町の鉄工所、木工所、八百屋、印刷屋、電気店 ──
みんなが自分の手で考え、つくり、地域の中で価値を循環させていた。
それが「挑戦の文化」でした。
けれど今の地方は、「失敗を恐れる文化」に変わってしまったように感じます。
守るばかりでは、新しい産業は生まれません。
いま必要なのは、「もう一度、自分たちの力で日本を動かす」という意識です。
創業者の想いを受け継ぐ
私がフジワラケミカルエンジニアリングの経営に携わるようになったのは、
創業者の志を受け継ぐ立場となってからです。
創業者である義父は、どんな時も「変化を恐れず、前向きに挑戦する」という姿勢を貫いていました。
その精神が、会社の風土として根づいています。
社員一人ひとりが自ら考え、試し、工夫し、現場の力で課題を乗り越える。
その積み重ねが、今日のフジワラケミカルエンジニアリングを支えています。
私はこの風土を守りながら、時代の変化に合わせて新しい挑戦を続けることが、
次の経営者としての使命だと感じています。
技術を広げ、産業をつなぐ
当社はこれまで、半導体装置向けのプラスチック加工を中心に、
品質と信頼を積み重ねてきました。
しかし、時代が大きく変わる中で、私はこう思うようになりました。
「この技術を、もっと多くの産業の力に変えたい」と。
- 食品業界では、衛生性を重視したPPやPE加工品の需要が高まっている
- 医療業界では、PVCやPVDFの化学的安定性が求められている
- 環境分野では、再生プラスチックや省エネルギー機器が注目されている
これらの分野に、私たちが培ってきた溶接技術や樹脂設計のノウハウを生かせると確信しています。
実際に、食品・医療・環境・アグリテックなどの分野で新しい引き合いをいただき、
技術提案や試作の機会が増えています。
プラスチック加工という「技術の根」を守りながら、
新しい「産業の枝葉」を伸ばしていく。
これが、私たちが描く「地方発のものづくりの進化」です。
デジタルを活かし、つながる企業へ
私たちは近年、デジタル発信にも積極的に取り組んでいます。
技術コラムを通して専門知識や実例を公開し、
ウェブやSNSで全国の企業と情報を共有しています。
それにより、これまで出会えなかった業界や企業との接点が生まれ、
試作、共同開発、情報交換などの新しい関係が広がりました。
デジタルは単なる情報発信の手段ではありません。
それは、地方と世界をつなぐ「新しい動脈」です。
地方にいながらにして、自ら発信し、共創する時代。
私たちはその流れを実践しています。
この取り組みを通じて、
「地方企業でもできる」「発信すれば届く」という確信を得ました。
今後も、デジタルを活用して「見える技術・伝わるものづくり」を続けていきます。
地方こそ、新しい産業が生まれる土壌
私は、地方にはまだ多くの「可能性の芽」が眠っていると思っています。
地方には、都会にはないものがある。
それは、「現場の課題」と「人と人の信頼関係」です。
課題がある場所にこそ、アイデアが生まれます。
そして、信頼関係のある場所にこそ、新しいことが根づきます。
たとえば、
- 農業と製造業が手を組んだ「スマート農業設備」
- 食品工場の衛生環境改善に貢献する「樹脂装置・ライニング技術」
- 廃プラスチックを再利用する「地域循環型リサイクル」
こうした動きは、すでに地方から始まっています。
地方は「遅れている場所」ではなく、
現場から次の日本をつくる土壌なのです。
お金の流れを未来に変える
もう一つ、地方が変わるために必要なのは「お金の流れ」です。
これまでの日本は、大企業や株主を中心とした「効率と安定の経済」で動いてきました。
その結果、地方の小さな挑戦は評価されにくく、投資が集まりにくい構造になっています。
けれど、地方の中小企業こそが、現場を知り、課題を発見し、解決できる存在です。
だからこそ、地方から未来へ投資する仕組みを生み出すべきだと考えています。
大企業が行うCVC(企業ベンチャーキャピタル)のように、
地方企業が自ら出資・協業・支援を行い、
地域に根ざしたスタートアップを育てていく。
フジワラケミカルエンジニアリングでも、
外部パートナーとの共同開発や技術支援を通して、
新しい価値を地域に還元する取り組みを始めています。
お金を「過去の実績」ではなく「未来の挑戦」に向ける。
それが、地方から始める経済の新しい形だと思います。
変化を恐れず、仲間とともに前へ
私が日々の経営で強く感じるのは、
「挑戦は一人では続かない」ということです。
挑戦には仲間が必要です。
フジワラケミカルエンジニアリングには、
前向きに考え、変化を恐れず動く社員たちがいます。
この仲間たちが、会社の原動力です。
創業者が築いた風土が、いまも息づいていることに心から感謝しています。
私の役割は、その想いを次の時代へつなぐこと。
そして、どんな変化の中でも希望を失わず、
仲間とともに一歩ずつ前へ進むことです。
地方から、日本をもう一度動かす
地方は、もう「補助される側」ではなく、「生み出す側」に立つ時です。
課題の中にこそ、産業の芽があり、
現場の中にこそ、未来の答えがあります。
フジワラケミカルエンジニアリングは、
その一端を担う企業でありたいと思います。
- 地方の技術を磨き、新しい産業をつくる
- デジタルで全国とつながり、共に課題を解く
- 挑戦を恐れず、変化を受け入れる文化を育てる
この循環が広がれば、地方はもう一度、日本を動かす力になります。
「守る経済」から、「生む経済」へ。
その転換は、東京ではなく地方からこそ始まると、私は信じています。
終わりに
創業者の想いを受け継ぎ、仲間とともに歩む中で、
多くの出会いや学びをいただいてきました。
それら一つひとつが、私たちの成長の糧です。
これからも、
フジワラケミカルエンジニアリングは、
時代の変化に柔軟に対応しながら、
地域とともに挑戦を続けます。
そして、
地方から日本をもう一度、動かす。
その想いを胸に、これからも確かな一歩を積み重ねていきます。

