金属から樹脂へ[PVDF編]:薬品・クリーン環境に「負けない」耐薬品樹脂の新たな選択

ものづくりの現場ではいま、「金属から樹脂へ」という転換が静かに、しかし確実に進んでいます。
軽量化、防錆、薬品耐性、静音化――。これまで金属でなければ成立しなかった構造や装置も、機能性プラスチックの進化によって、新しい設計の自由度を手にしつつあります。

フジワラケミカルエンジニアリングでは、PP(ポリプロピレン)・POM(ポリアセタール)・MCナイロン・UHMW-PE・PEEK・PVDFといった代表的なエンジニアリングプラスチックを中心に、「金属構造をどう樹脂化するか」という視点から、設計段階での素材選定支援と加工提案を行っています。

本コラム「金属から樹脂へ」シリーズでは、金属の代替として注目される6種類の機能性樹脂を取り上げ、それぞれの特長・設計上の考え方・実際の導入効果を紹介していきます。
素材ごとの「強み」と「設計思想の違い」を知ることで、現場に合った最適な置換設計を見極めるためのヒントをお伝えします。

シリーズ最終回は、PVDF(ポリフッ化ビニリデン
塩素・酸・溶剤などの過酷環境にも耐える「クリーン対応樹脂」として、SUSやガラスでは対応できない領域を樹脂で実現します。

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    「腐食と戦う装置」からの脱却

    化学装置や薬液槽など、過酷な薬品環境における最大の課題は「腐食」です。
    鉄やアルミはもちろん、SUSでさえ塩素やフッ酸、硝酸などに長期間は耐えられず、腐食・ピンホール・汚染を避けられません。
    多くの装置では「定期的に交換すること」が前提となり、メンテナンスコスト・ダウンタイムが避けられない構造となっていました。

    こうした状況の中で、10年以上の連続稼働実績を持つのがPVDF(ポリフッ化ビニリデン)です。
    フッ素系樹脂の中でも特に加工性・溶着性に優れ、高純度 × 耐薬品性 × 耐候性を兼ね備えたバランス型素材。

    金属では不可能な「錆びない・溶けない・汚さない」構造を実現し、「腐食と戦う」時代から「腐食をなくす」時代へと、設計思想を大きく転換させています。

    フジワラケミカルエンジニアリング正式基準によるコスト比較

    PVDF(ポリフッ化ビニリデン)は、強酸・強アルカリ・塩素・溶剤など、金属でも劣化する過酷な薬品環境下で安定して使用できる高耐薬品性樹脂です。
    特にクリーンルームや薬液処理設備などでは、SUSやガラスでは対応が難しい環境にも耐えられるため、「金属を超えるクリーン対応素材」として高く評価されています。

    一方で、設計段階では「どの程度の厚みやコストで金属代替が成立するか」を把握することが重要です。
    当社では他素材と同様に、実際の仕入単価と比重をもとに「鉄1mm厚=1.0基準」で比較を行っています。

    その結果、鉄1mm厚と同等の剛性を得るには、PVDF約4mm厚が目安となります。
    このときの重量は約0.91倍(やや軽い)で、実質コスト比は約16.0(約16倍)
    材料単価が非常に高いため初期コストは大きいものの、SUSでも腐食する塩素・酸・溶剤環境において長期安定性を維持できる数少ない素材です。

    材料比重必要厚み重量比(鉄=1)樹脂単価(鉄=1)実質コスト比コスト評価
    鉄(基準)7.81mm1.001.01.0
    SUS3047.91mm1.003.03.0高価(約3倍)
    アルミ(A5052)2.72mm0.692.01.38やや高い(約1.4倍)
    PVDF(ポリフッ化ビニリデン)1.784mm0.9117.616.0高価(約16倍)

    この比較から、PVDFは圧倒的な耐薬品性とクリーン性を備える反面、コストはおよそ16倍規模となることがわかります。
    しかし、SUSでも腐食する薬液環境で長期使用が可能な点や、再研磨・再塗装が不要で衛生性を維持できる特性を考慮すれば、「導入コストよりも停止コストを抑える素材」として、薬品槽・配管・純水設備・クリーン機構などでは非常に合理的な選択肢となります。

    PVDFのPOINT
    • 鉄1mmと同等強度を得るには、PVDF4mm厚が目安
    • 重量は0.91倍(ほぼ同等)ながら、コストは約16倍
    • 「どんな薬品にも耐える」「金属が使えない場所で使える」という独自の価値
    フジワラケミカルエンジニアリング正式基準について

    本表は、当社社内で採用している「鉄1mm厚=1.0基準」に基づく正式比較表です。
    各素材の比重・厚み・単価は、実際の入手性と仕入単価をもとに算出しています。
    用途や時期により変動する場合がありますので、設計検討時の参考目安としてご活用ください。

    PVDFの特長:「薬品に耐える」を超えたクリーン性能

    PVDFの価値は、単に「耐える」ことではなく、「汚さない」ことにあります。
    高純度環境で安定し、装置の清浄性・寿命・保守性を同時に高める――その総合力こそが、PVDFを特別な存在にしています。

    ① 驚異的な耐薬品性

    酸・アルカリ・有機溶剤・酸化剤など、ほぼすべての薬液に対して安定。
    塩素・硝酸・フッ酸・塩化水素など、SUSが腐食する環境でも長期間の使用が可能です。
    薬液槽・排気スクラバー・純水装置・薬品供給系など、化学的負荷の高い部位で採用され、「交換しなくてよい構造」を実現します。

    ② クリーンで汚染しない

    PVDFは溶出物が極めて少なく、高純度プロセスに最適です。
    半導体製造・医薬製造・分析装置では、金属イオン汚染を防ぐための素材として採用されています。
    金属製タンクや配管では避けられない微量の溶出・析出が、製品歩留まりや分析精度に影響する場合、PVDFは「不純物を持ち込まない素材」として最も信頼されています。
    また、成形後も分子構造が安定しており、経年による汚染リスクが少ない点も特筆されます。
    その高い化学的安定性は、クリーンルームや高純度水システムなど、わずかな汚染も許されない環境で真価を発揮します。

    ③ 耐熱性・耐候性も両立

    連続使用温度は約140℃、短時間なら150℃以上でも構造安定性を維持します。
    また、紫外線や屋外環境にも強く、長期間白色を維持できるため、屋外ダクトや排気処理設備など、環境変動の激しい現場でも使用可能です。
    「見た目の清潔さ」までも維持できる点は、クリーン産業において重要な付加価値となります。

    PVDF特長のまとめ

    PVDFは、「耐薬品性」「クリーン性」「耐久性」の3要素を高次元で両立した素材です。
    腐食・溶出・紫外線劣化といった金属の弱点をすべて克服し、「汚さず・劣化せず・長く使えるという構造上の安心をもたらします。
    すなわち、PVDFは耐える素材ではなく、
    保ち続けるための構造材

    化学的ストレスと清浄要求が交差する現場において、高純度プロセスを支える「最後の防壁として、いま最も信頼される樹脂です。

    金属との比較:「腐食ゼロ」という新しい価値

    金属では、薬液・湿気・紫外線といった複合要因によって、必ず劣化や腐食が進行します。
    一方、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)は「腐食しない」ことを前提に設計できる数少ない素材のひとつです。
    ここでは、主要金属との比較を通して、その特性を整理します。

    比較項目アルミSUSPVDF
    重量1.000.691.000.91(ほぼ同等)
    コスト1.001.383.0016.0(約16倍)
    耐薬品性×◎(全薬品対応)
    耐熱性〇(140℃程度)
    防錆性要塗装錆びにくい錆びにくい◎(錆びない)
    溶出・汚染◎(極めて少ない)
    加工性切削・溶接切削難しい溶着・切削・曲げ可

    この比較から明らかなように、PVDFはコストではなく機能で選ばれる素材です。
    たとえ価格が高くても、腐食や再塗装、清掃、交換といった維持作業を根本的に減らすことができ、
    結果として装置全体のライフサイクルコストを最小化します。
    SUSでも耐えきれない酸・塩素・有機溶剤環境において、PVDFは長期安定性を発揮し、清浄性・耐久性・保守性を同時に高めます。
    まさに「腐食対策そのものを不要にする」という新しい価値を生む素材です。。

    導入効果と実例:現場で見える成果

    PVDFは、単に「錆びない」だけでなく、長期安定運用を可能にする素材として各種装置に導入されています。
    当社での実績の一部を紹介します。

    実績
    SUS薬液槽 → PVDF槽

    フッ酸腐食ゼロ、10年以上ノーメンテナンス。

    実績
    鉄製配管 → PVDF配管

    内面スムーズ、薬液ロス・詰まりが激減。

    実績
    アルミカバー → PVDFカバー

    紫外線劣化なし。屋外環境でも色変化わずか。

    これらの結果は、単なる素材置換ではなく、腐食という概念そのものを装置設計から排除する発想を意味します。
    PVDF化の最大の効果は、「腐食対策の終わり」です。
    防錆塗装・定期洗浄・表面研磨といった維持作業を根本から不要にし、「守るために使う時間」を、使い続けるための信頼へと変える素材です。

    設計のポイントと最適化の工夫

    PVDFは優れた性能を持ちますが、その真価を引き出すためには設計段階での工夫が欠かせません。
    とくに次の3つの視点が重要です。

    ① 高コスト材ゆえの部分採用

    PVDFは高価なため、装置全体ではなく、接液部・高負荷部・薬液暴露部に限定して使用するのが一般的です。
    PPやPEとのハイブリッド構造とすることで、コスト最適化と性能維持の両立が可能になります。

    ② 加工性・溶着条件

    高温で軟化するため、温度管理が精密な溶着技術が重要です。
    当社では溶着・曲げ・切削を組み合わせ、用途に応じた一体構造を実現しています。
    これにより、接合部の薬品リークや応力集中を防止しています。

    ③ 剛性補強の設計

    PVDFは金属より柔らかいため、補強リブやフレーム支持構造を設けることで変形を抑制します。
    特に大型槽や長尺ダクトでは、「自重でたわまない」設計が耐久性を左右します。

    以上の工夫を加えることで、PVDFは「高価な樹脂」から「長期運用に耐える構造材」へと変わります。

    PVDFが選ばれる理由:腐食しない構造がもたらす設計自由度

    PVDFが選ばれる最大の理由は、「金属では成立しない環境で機能を維持できる」という一点にあります。
    鉄やSUSをはじめとする金属材料では、腐食や汚染を完全に防ぐことは困難です。
    一方PVDFは、化学的安定性・清浄性・耐候性を高い次元で両立し、設計段階から「劣化しない」「汚さない」「錆びない」構造を組み込むことができます。

    具体的には次のような特長が、現場での採用を後押ししています。

    • SUSでも腐食する環境に使用可能:塩素・フッ酸・硝酸など強酸性薬液でも長期安定
    • 塗装・防錆・コーティングが不要:保護処理を前提としない「構造的な耐薬品性」
    • クリーンで溶出しない:金属イオン汚染を防ぎ、製品純度・分析精度を維持
    • 屋外・薬液・高温のすべてに安定:長期的な外観・物性の変化が少ない

    こうした特性により、PVDFは単なる代替材ではなく、新しい設計思想を可能にする素材として選ばれています。
    設計者にとってそれは、「腐食を避ける」ではなく「腐食の概念をなくす」ための選択――
    まさに、薬品・クリーン・屋外環境をまたぐ「統合構造材」といえる存在です。

    まとめ:金属からPVDFへ、「腐食しない構造」という選択

    PVDF(ポリフッ化ビニリデン)は、酸・アルカリ・塩素・溶剤などにも劣化しない「腐食ゼロの高耐薬品樹脂です。
    SUSやガラスでも耐えられない過酷な環境下で、「腐食対策そのものを不要にする」素材として機能します。

    フジワラケミカルエンジニアリングでは、PVDF製のタンク・ダクト・薬液槽などを製作し、メンテナンス削減と長期安定運用を両立しています。

    たとえ初期コストが高くとも、再塗装・清掃・交換といった維持コストを根本的に削減できるのがPVDFの真価です。

    金属では腐食を「抑える」発想から、樹脂で「腐食させない」発想へ
    PVDFは、装置の信頼性を守るための新しい設計基準となります。

    フジワラケミカルエンジニアリングの提案姿勢

    フジワラケミカルエンジニアリングは、
    お客様の製品開発に伴走する技術パートナーです。

    PP・POM・MCナイロン・UHMW-PE・PEEK・PVDFなど、多様な機能性樹脂を扱い、薬品・クリーン環境に適した設計・加工をサポートしています。

    PVDFは、塩素・酸・溶剤などの過酷環境でも安定する耐薬品樹脂。
    化学槽・配管・分析装置・クリーンルーム部材などで、腐食や汚染を防ぎ、長期安定稼働を支えます。

    金属やガラスでは難しい耐薬・クリーン・軽量設計を、実績に基づいて最適化します。

    「薬品環境でも長く使える構造を」
    ――そのご要望に、最適素材でお応えします。

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