静かな市況を読む。小さな需要に応え、次を創る:フジワラケミカルの提案型技術(2025年版)

2025年、半導体産業をはじめとするものづくりの現場は、大きな変化の「兆し」と静かな停滞が交錯しています。大量生産型から個別最適・高機能ニーズへのシフトが進み、小さな需要にも柔軟かつ的確に応える技術力が、企業の「選ばれる理由」となる時代です。

フジワラケミカルエンジニアリングは、設備改善・小ロット加工・非金属部品製作など、現場課題に寄り添う提案型技術で信頼を積み重ねてきました。本コラムでは、半導体・医療・分析・化粧品分野を中心に、2025年の市況変化とともに、当社の「提案力」「加工前の課題解決力」がどのようにお客様の「現場価値」に貢献しているかを、具体的な事例とともに解説します。

第1章 静かな市況にひそむ「選別」の本質

2025年、半導体業界は表面的には静けさを感じさせる状況にあります。2020年から2022年にかけてのDX需要やテレワーク特需に支えられた投資ラッシュが一巡し、2023年後半からは装置メーカーや部材関連企業において新規受注の勢いが一服しています。

しかし実態としては、半導体投資は「止まっている」のではなく、「選別されている」のが特徴です。特に2024年から2025年にかけては、次のような傾向が鮮明になっています。

  • スマホやPC向けの汎用DRAM・NAND向けは在庫調整が続き、レガシー設備や成熟プロセスの投資が抑制
  • 一方で、AI・HPC(高性能計算)向けのGPUやアクセラレータで使われる「HBM(高帯域幅メモリ)」は急成長
  • 装置・部材の分野でも、HBM対応プロセスに寄り添えるかが技術の評価軸に変化

HBMではDRAMチップを垂直に積層し、TSV(シリコン貫通電極)で接続するため、接合前後の洗浄工程や封止技術において非常に高度な制御が求められています。洗浄装置だけでなく、その周辺で使われる薬液供給ユニット、配管、流体制御部品にも「異物ゼロ」「気泡ゼロ」「安定供給」が問われており、設計思想そのもののアップデートが必要とされる状況です。

この構造変化に先行対応したメーカーが市場で存在感を高めており、たとえばHBM3の量産で一歩先んじたSK hynixは、2024年からNVIDIAへの採用実績を軸に大幅な業績回復を果たしました。SamsungやMicronもHBM3Eや次世代HBM4の開発に注力しており、材料・設備・部品のレベルでもHBM向け対応力が問われています。

一方、サムスン電子の歩留まり課題、台湾TSMCの投資の一部抑制など、全体投資は慎重姿勢も見られます。つまり2025年の半導体市況は、「先端集中」と「選別停滞」が共存する二極構造と言えるのです。

日本国内においては、HBMのような先端メモリプロセスが量産されるラインは限られていますが、研究開発用・改修用・試作対応といった「スモールスケールかつ高機能な加工ニーズ」は確実に存在しています。薬液供給ユニットの更新や透明配管の改造、清掃性改善の提案など、設備更新ではなく「設備改善」を支える技術こそ、いま国内で求められている領域です。

まとめ
  • HBM需要が半導体投資の主役に
  • 洗浄や供給周辺装置への要求が急速に高度化
  • 日本国内ではスモールスケールな改善型加工が活発

第2章 少ロット・現場最適型の依頼が増えている

当社がこの1年で対応した仕事の多くは、小ロット・個別対応型のものです。

具体的には…

  • 薬液供給ユニット向けのオーダー加工(PP・PVC)
  • 軽量かつ洗浄性に優れたカバーや蓋の提案製作
  • 大学研究室から依頼を受けた円球型試験パーツ
  • スイカを星型に成長させるための専用成型カバーの試作

いずれも大量生産ではなく、「現場ごとに必要なかたち」を一緒に考え、加工するプロセスです。素材の選定、納まりの調整、取り扱いのしやすさなどが成果物の評価を左右します。

このような案件では、現場担当者様や研究者の方と直接コミュニケーションを重ねることが多く、用途や使い勝手に合わせて細かなカスタマイズを行うことで、「ちょうどいい」加工品が実現できます。納品後、「イメージ通りに使えた」「困っていたことが解決した」といった反響をいただけることが、私たちの大きなやりがいになっています。

まとめ
  • 小ロット対応の相談が増加し、柔軟性が求められている。
  • 使用現場に即した素材・構造の工夫が信頼につながる。

第3章 「図面にない課題」への提案力

当社では、「加工=作業」ではなく、「提案=価値創出」と捉えています。

たとえば、清掃しにくい金属蓋をPPで軽量化・一体化すれば、洗浄効率や作業性が大きく改善します。また、蒸気配管の一部を透明化することで、目視確認や異常検知が容易になります。

こうした改善は、図面に書かれている仕様だけでなく、「どの現場で、誰が使い、何に困っているか」を共有するところから始まります。

ときには、現場見学や作業フローのヒアリングから「隠れた課題」を掘り起こし、より良いご提案につなげています。単なる図面通りの加工ではなく、現場での本当の使い勝手やメンテナンス性まで見据えたものづくりを心がけています。

まとめ
  • 仕様に表れない「困りごと」への提案が付加価値を生む。
  • 現場の声から加工アイデアが生まれている。

第4章 医療・分析・化粧品分野への応用

当社の提案型加工スタイルは、食品業界に続き、医療・分析・化粧品といった“清浄性・非金属性・耐薬性”が求められる分野にも広がりつつあります。

特に、透明なPMP素材の採用や耐薬性のあるPP・PVC加工、滅菌対応部品などが注目されており、小ロットかつ精密な加工品の引き合いが増えています。

これらの分野では、衛生面や薬液耐性に関するご要望が厳しく、図面や仕様書だけでは伝わらない細部への配慮が重要です。たとえば、微細なバリの除去や滑らかな仕上げ、使用環境を想定した素材選定など、お客様とじっくり対話しながら加工方針を固めていきます。
また、小ロット・短納期といった要望にも柔軟に応えることで、大学や研究機関、医療系メーカーなど新たな顧客層からのご相談も着実に増えています。

まとめ
  • 非金属・清浄・耐薬といった特性が異業種で活きる。
  • 小ロットかつ高精度な加工品が新分野で注目されている。

第5章 今こそ「信頼を積み上げる」とき

市場が穏やかな今だからこそ、小さな仕事を丁寧に積み上げることが、次の大きな仕事につながると私たちは信じています。

「またお願いしたい」「他部署にも紹介したい」といった声が、受注のきっかけになる今、加工前の提案段階から真摯に向き合うスタンスが重要だと感じます。

地道な案件の一つひとつが、将来の大きなプロジェクトや業界全体への信頼構築につながっていきます。お客様の期待に一つずつ応え続けることで、社内外に「フジワラケミカルに頼めば安心」という評価が広がることを目指しています。

まとめ
  • 目立たない仕事の積み重ねが大きな信頼につながる。
  • 今こそ「加工前の提案力」を育てる時期。