屋外使用の専用カバー対応における材料選定と加工判断の実際

── はじめに

屋外で使用される照明カバーやセンサー保護カバー、各種機器の専用カバーは、一見すると「透明(または乳半)で形状が合えばよい」と思われがちです。しかし、実際の現場ではそう単純にはいきません。

屋外という環境は、樹脂材料にとって想像以上に過酷です。

屋外環境の過酷さ
  • 紫外線
  • 雨風
  • 温度変化
  • 結露
  • 日中と夜間の急激な熱伸縮

これらは室内用途とはまったく異なる条件にさらされます。
そのため、材料選定や加工方法の判断一つで、長期使用時の品質が大きく変わってきます。

── 今回の案件概要

このような屋外環境の厳しさを踏まえて、今回お客様からご相談いただいたのは、以下のような仕様の屋外用照明カバーです。

案件要件
  • 形状:φ60×96L の円筒形カバー
  • 用途:屋外用照明カバー(耐候性必須)
  • 数量:50台分
  • 特記事項:灯具との接続部にねじ切り加工が必要

一見シンプルな形状ですが、屋外使用という条件と少量生産という制約の中で、慎重な検討が必要な案件でした。

── 3つの検討ポイント

このシンプルに見える案件に対して、実際にはどのような点を検討する必要があったのでしょうか。大きく分けて3つのポイントがありました。

検討ポイントのまとめ
  • 検討ポイント①:材料選定
    屋外環境での耐候性、少量での調達可能性、コストのバランスをどう取るか。
  • 検討ポイント②:製作方法
    既製パイプを使うか、板材から成形するか。品質・コスト・納期への影響は。
  • 検討ポイント③:ねじ部の強度確保
    接続部の肉厚不足による破損リスクをどう回避するか。図面だけでは判断できない部分をどう確認するか。

これらは独立した課題ではなく、相互に影響し合います。
材料を変えれば加工方法も変わり、加工方法が変わればねじ部の設計も見直す必要が出てきます。

── 本記事の目的

本記事では、この3つのポイントについて、実際にどのように検討・判断・提案したのか、その一連の流れを一次情報として整理します。

理論上の最適解ではなく、「材料選定」「加工方法」「強度確保」という現実的な検討ポイントの中で、どのように考え、どこで断念し、最終的に何を提案したのか。そのプロセス自体が、同じような検討をされている設計者・調達担当者の参考になれば幸いです。

それでは、実際の検討プロセスを順を追ってご紹介します

検討ポイント①:材料選定

屋外用カバーの材料選定では、耐候性だけでなく、調達条件も重要です。性能的に優れていても、必要数量に対応できなければ採用できません。

検討A:ポリカーボネート

屋外用途の樹脂カバーとして、まず候補に挙がったのがポリカーボネート(以下、ポリカ)です。
ポリカは耐衝撃性が高く、割れにくい材料として広く知られており、屋外用途でも採用実績の多い樹脂です。

ポリカのメリット
  • 耐衝撃性:高く、割れにくい材料として広く認知
  • 屋外実績:屋外用途での採用実績が多数
  • 耐候性:良好(ただしアクリルより劣る)

しかし、実際に調査を進めると、材料メーカー側の最低ロットが100本以上という条件がありました。今回の必要数量は製品50台分であり、1台につき1本のパイプが必要なため、実質的には50本で足りる計算です。しかし、将来的な追加予定も未確定であったため、100本という最低ロット条件は現実的ではありませんでした。

断念理由:調達条件
  • メーカー最低ロット:100本以上
  • 今回必要数量:50台分(=50本)
  • 将来的な追加:未確定
  • 結論50本余剰が発生、ロット条件が現実的でない

ここで重要なのは、「材料性能としては適している」ことと、「今回の案件に採用できる」ことは別だという点です。少量生産や専用品では、材料そのものよりも、調達条件がボトルネックになるケースは少なくありません。

検討B:アクリル

ポリカが調達条件で断念となったため、次に検討したのがアクリルです。

アクリルのメリット

アクリルはポリカに比べると耐衝撃性では劣りますが、屋外用途における耐候性や透明性の安定性に優れており、少量対応が可能な既製パイプが入手できる点が大きなメリットでした。

結論

ポリカとアクリルの比較をまとめてみます。

比較項目アクリルポリカーボネート
耐衝撃性△ やや劣る◎ 優れる
耐候性◎ 優れる〇 良好
透明性の安定性◎ 優れる〇 良好
少量調達◎ 可能△ 困難(ロット制約)
既製パイプ入手◎ 容易△ ロット条件あり

今回の案件では、調達性と耐候性のバランスからアクリル乳半を採用することとしました。

検討ポイント②:製作方法

材料をアクリルに決めた後、次に検討したのがパイプをどう製作するかです。品質・コスト・納期が大きく変わるポイントです。

検討A:熱曲げ加工

板材を熱曲げし、筒状に成形する方法を検討しました。

この方法であれば、板材の調達自由度が高く、数量的な制約も小さくなります。
加工としても、熱曲げ自体は特別な技術ではなく、形状だけを見れば対応可能でした。

熱曲げ加工のメリット
  • 板材の調達自由度が高い
  • 数量的な制約が小さい
  • 熱曲げ自体は特別な技術ではない
  • 形状だけを見れば対応可能

しかし、実際の使用条件を細かく検討していく中で、いくつかの問題点が浮かび上がりました。

問題①:接合部の存在

筒形状にするためには縦方向に接合部(溶接または接着)が必ず入ります
この接合ライン自体は、見た目だけの問題であれば許容される場合もありますが、今回は灯具との接続部にねじ切り加工が必要でした。

問題②:ねじ加工との干渉

ねじ加工を行う際、接合ラインを常に裏側に逃がすことは難しく、ねじ山と接合部が重なる可能性があります。これは強度面だけでなく、加工時の欠けや、長期使用時のクラック発生リスクにもつながります。

熱曲げ加工のリスク
  • 強度面の懸念:接合部とねじ部の重複による強度低下
  • 加工時のリスク:欠けの発生可能性
  • 長期使用のリスク:クラック発生リスク
  • 構造上の課題:接合ラインを裏側に逃がすことが困難

「作れるかどうか」だけで判断すれば可能な方法でしたが、「屋外で長く安心して使えるか」という視点では、リスクが高いと判断し、熱曲げ加工は断念しました。

検討B:既製品使用

熱曲げ案のリスクを回避するため、既製のアクリルパイプを使用する方法を検討しました。
既製パイプを使用することで、以下のような利点が得られます。

既製品のメリット
  • 形状精度が確保しやすい
  • 肉厚の均一性が高い
  • 加工品質の安定につながる
  • 数量的な柔軟性がある
  • 接合部がないため、ねじ加工との干渉リスクがない

結論

既製パイプは工場で一定の品質管理のもと製造されているため、板材を曲げて筒状にする方法と比べて、寸法精度や肉厚のばらつきが少なくなります。また、少量でも調達しやすいという点も、今回のような50台程度の案件では重要なポイントでした。

既製のアクリル乳半パイプを使用する方法を採用することとしました。

検討ポイント①②の結論:アクリル乳半パイプ(既製品)

検討の結果、アクリル乳半の既製パイプを使用することを最終提案としました。

想定仕様

想定仕様は、既製のアクリル乳半パイプ(φ60×3t、長さ96L)を使用する形です。

アクリル乳半パイプの仕様

材質:アクリル(乳半)
外径:φ60mm
肉厚:3t
長さ:96L
形態:既製パイプ使用

最終提案の根拠

以下の組み合わせにより、耐候性・調達性・品質安定性のバランスが取れた提案となりました。

検討ポイント選択した方法理由
①材料選定アクリル耐候性に優れ、少量調達が可能
②加工方法既製パイプ接合部がなく、品質が安定

事前にお伝えした注意点

一方で、注意点として、パイプ部とフタ部で若干色味が異なる可能性があることを、事前に正直にお伝えしています。

専用品では、こうした点を曖昧にせず、事前共有することが重要だと考えています。仕様確定後に「想定と違った」となることを避け、お客様に納得いただいた上で進めることを重視しています。

同じように屋外用カバーの材料選定や数量対応でお困りの場合は、各種ご依頼ページからお気軽にご相談ください。
実使用環境を踏まえた提案をさせていただきます。

検討ポイント③:ねじ部の強度確保

材料と加工方法が決まっても、接続部の設計を誤れば製品として成立しません
特にねじ部は、局所的に力が集中するため、慎重な検討が必要です。

なぜねじ部が重要なのか

屋外用カバーで特に注意が必要なのが、灯具や本体との接続部、つまりねじ部です。

今回のケースでは、パイプ肉厚が3tの場合、ねじピッチによっては極端に薄い部分が発生する可能性がありました。これは、加工時の欠けだけでなく、使用中の割れや破損につながるリスクがあります。

リスク要因の詳細

リスク項目詳細内容
肉厚不足ねじピッチによって極端に薄い部分が発生
加工時欠けのリスク
使用時割れや破損のリスク
長期耐久性応力集中による劣化

樹脂加工における重要な考え方

樹脂加工では、「全体形状」よりも「局所的に力が集中する部分」の設計が、耐久性を大きく左右します。

ねじ部はその代表例であり、現物確認を省略すべきではないポイントです。
図面上では問題なく見えても、実際の組み合わせで初めて分かる課題も少なくありません。

当社のねじ部強度確保プロセス

ねじ部の強度確保は、図面上の寸法だけでは判断できない部分が多くあります。特に、ねじ山の深さと樹脂の肉厚のバランスは、実際の部品を見なければ正確な評価ができません。

そこで、当社では以下のステップで安全性を確認します。

STEP
現物確認の実施

図面や寸法情報だけで判断せず、以下のいずれかの方法で実物を確認します。

方法A:既存品の確認
実際に使用されている灯具や接続部を見せていただき、ねじの形状や取り付け方法を確認します。

方法B:接続部品の借用
接続する相手部品をお預かりし、実際にねじ加工のシミュレーションを実施します。

STEP
強度評価

現物確認の結果から、以下の項目を評価します。

  • ねじ加工後の残肉厚は十分か
  • 応力が集中する箇所はないか
  • 長期使用でクラックが発生するリスクはないか
STEP
構造変更の検討(必要に応じて)

強度不足が懸念される場合は、以下のような構造変更をご提案します。

対策A:ねじ部の肉厚化
ねじ加工部分だけを5t程度に厚くすることで、十分な残肉厚を確保します。

対策B:別部品化
より厚い材料でねじ部品を作り、本体パイプと接着結合します。

お客様の使用環境や取り付け頻度なども考慮しながら、最適な構造をご提案します。

専用カバー対応で大切にしている考え方

今回の対応を通じて、改めて感じたのは、専用カバーほど初期判断の重要性が高いということです。

材料選定、加工方法、数量条件のどれか一つだけを見て判断すると、後工程や実使用段階で問題が顕在化することがあります。

具体的な検討内容
材料選定性能だけでなく調達可能性も考慮
加工方法実現可能性と品質安定性のバランス
数量条件ロット制約と実際の必要数との整合
長期使用屋外環境下での耐久性

これらの要素は互いに関連しており、トレードオフの関係にあることも少なくありません。

専用カバー検討で当社が大切にしている姿勢

当社では、「できます」と即答するよりも、「長く使えるか」「後で困らないか」という視点で検討し、場合によっては断念や仕様変更をご提案します。

それは、短期的な対応よりも、結果的にお客様の手戻りやトラブルを減らすと考えているからです。

  • 「できます」と即答して後で問題発生
  • 慎重に検討し、リスクを事前に共有
  • 必要に応じて代替案を提案
  • 長期的な信頼関係を構築

要点まとめ

今回の検討プロセスから得られた知見を整理します。

検討ポイント①:材料選定

屋外用カバーは、材料性能だけでなく数量・調達条件が重要です。

  • ポリカは性能的には優れているが、少量ではロット条件(100本以上)が障壁
  • 今回のように50台程度の案件では、調達可能性が決定要因になる
  • アクリルは耐候性に優れ、少量調達も可能

検討ポイント②:加工方法

技術的に可能でも、品質リスクを見極めることが重要です。

  • 板材の熱曲げは技術的に可能だが、接合部とねじ部が重なるリスクあり
  • 「作れるか」と「屋外で長く安心して使えるか」は別の判断軸
  • 既製パイプ使用は、形状精度・肉厚均一性・品質安定性で優位

検討ポイント③:ねじ部の強度確保

局所的に力が集中する部分は、現物確認が不可欠です。

  • 図面だけでは見えないリスクが存在する
  • ねじ加工後の残肉厚は実物で確認すべき
  • 必要に応じて肉厚化や別部品化などの構造変更を検討

専用品検討の本質

材料選定・加工方法・強度確保は独立した課題ではなく、相互に影響し合います。

一つの要素だけを見て判断すると、後工程や実使用段階で問題が顕在化することがあります。
短期的な「できます」よりも、長期的な「後で困らない」を重視した検討が重要です。

この事例が、屋外用樹脂カバーを検討されている方にとって、判断材料の一つになれば幸いです。

屋外用カバーのご相談はお任せください

今回ご紹介したような、材料選定から加工方法、強度確保まで、実使用を見据えた検討を行います。

このような課題をお持ちではありませんか?

  • 少量でも対応可能な材料を探している
  • 屋外環境での耐久性に不安がある
  • ねじ部など局所的な強度確保が必要
  • 図面だけでは判断できない部分がある
  • 長期使用を見据えた提案が欲しい

専用品や少量案件でも、丁寧な検討とご提案を行います。現物確認を含めた詳細な検討で、「後で困らない」製品づくりをサポートいたします。