PE管が支える上下水道インフラの進化:老朽化・耐震・腐食への次世代解答

かつての上下水道インフラを支えてきたのは、金属管や硬質塩化ビニル(PVC)管といった既存材でした。しかし、地震被害や老朽化の加速、維持管理コストの上昇、さらには熟練作業員の減少といった課題が顕在化する中で、新たなインフラ材料の選定が急務となっています。

そうした中、ポリエチレン管(PE管)が注目を集め、社会インフラの再構築における「次世代材」として存在感を増しています。本コラムでは、PE管の普及状況、技術的特性、今後の可能性、そして私たちフジワラケミカルエンジニアリングが果たす役割について、事例とともに掘り下げてご紹介します。

上水道におけるPE管の急速な広がり

ポリエチレン管が上水道インフラに登場したのは1990年代半ば。当初は布設技術の確立や材料信頼性の面で限定的な導入にとどまっていましたが、2011年の東日本大震災をきっかけにその認識は一変しました。地震後も破断せず、柔軟に地盤の揺れに追従するPE管の特性が、あらためて評価されたのです。

2021年度末時点で全国の布設延長は54,567kmに達し、特に口径150mm以下では普及が急進。東大阪市では、耐震性と施工性を評価し、2022年度から小中口径の配水管に本格導入を開始しました。(出典:JWWA/東大阪市資料より)

また、全国平均で水道管の耐震化率は42.3%(2023年)にとどまっており、これを引き上げる有効な手段としてPE管は確実に存在感を高めています。

導入が進む背景には、「軽くて扱いやすい」「溶接でつなぐため漏水が少ない」「腐食しない」といったPE材ならではの材料特性はもちろん、現場における施工効率の高さや、人材不足に対応できる簡易施工性といった社会的ニーズへの合致も大きな要因です。

さらに、施工現場の作業軽減や熟練技能者不足の解消といった観点からも、PE管の導入は現場レベルで高く評価されており、今後の更新計画では、特に中小口径領域での採用がスタンダードになると考えられています。
フジワラケミカルエンジニアリングでも、こうした現場課題に対応すべく、軽量素材の自由設計や、現地押出し溶接による簡易・短期施工体制の整備を進めています。

下水道インフラにおける応用と今後の可能性

下水道分野におけるPE管導入は、当初は圧送式や真空式下水道といった特殊な用途から始まりました。耐震性や耐腐食性に優れ、特に酸・硫化水素による腐食が問題となる施設でのニーズが高まり、導入が拡大しています。さらに、日本下水道協会の規格(JSWAS K-14/K-15)にも準拠しており、耐震型管路の構築に資する素材として今後の成長が期待されています。

実際には、重力式の下水道本管における採用はまだ限定的であるものの、補完的な用途では急速に広がりを見せています

PE材の応用事例
  • 既存管のライニング補修材(内挿型PEパイプとして)
  • マンホール内インバート部の改修
  • 浸水対策用バイパス管の仮設施工
  • 老朽管の一時補修用プレハブパイプ

このように、PE材は「新設管路材」としてだけでなく、「補修・延命」「仮設対応」といった多様なニーズに応えるマルチユース材としての展開が進んでいます。

PE管が提供する5つの技術的アドバンテージ

加工されたPE管

①地震対応性:大地の揺れに追従する柔軟性

PE管最大の特徴のひとつが、優れた可とう性です。地震動や地盤沈下に対してもしなやかに追従し、接合部を含む管路全体が応力を分散。押出し溶接などによる一体構造化によって、継手の破断や漏水リスクを大幅に低減できます。

②腐食に強い:素材本来の安定性と長期耐久性

PEは非金属で化学的に安定しており、酸・アルカリ・塩分などに対して高い耐性を発揮。薬品や腐食性ガスが発生する施設にも安心して導入できる素材です。FRPや鋼材に比べて、劣化や腐食による交換頻度が低く、長期使用にも適しています

③高い水密性能:押出し溶接による一体構造で漏れを防ぐ

PE同士を押出し溶接で一体化することにより、接合部に段差や隙間がなく、非常に高い水密性が実現可能です。漏水・侵入水対策が求められるインフラ設備では、この「一体構造」による安心感が大きなメリットとなります。

④施工性・軽量性:狭小現場や短工期への対応力

比重が鉄の約1/8と軽量なPEは、人力での搬入や据付が可能で、狭小地や地下ピットなどでも扱いやすい素材です。フジワラケミカルエンジニアリングは、曲げ加工や押出し溶接による自由設計を強みとし、現場状況に応じた柔軟な部材供給を実現しています。

⑤長寿命とライフサイクルコスト:更新負担の軽減に直結

PEは耐候性・耐薬品性に優れ、100年を超える耐用年数が期待される素材です。長寿命であることは、更新工事や保守点検の頻度を大幅に削減できるということ。フジワラケミカルエンジニアリングでは、溶接構造品や曲げ加工部材を通じて、長期的に安心できる設備の提供を行っています。

フジワラケミカルエンジニアリングの役割と実例

今後、上下水道管の大規模な更新需要が見込まれるなか、PE管の市場シェアはますます拡大していくと予想されます。実際、2030年代には配水管の7~8割がPE管になるとの見方もあります。

このような環境変化において、我々フジワラケミカルエンジニアリングのような自由設計型・押出し溶接対応の技術企業が果たせる役割は多岐にわたります。

事例
排水槽のリプレイス事例(化学工場施設内)

既存のFRP製薬液槽の老朽化により、PE材での代替を依頼された案件。寸法制約がある地下ピットへの搬入・現地押出し溶接施工により、撤去不要で短期間に据え付けが可能となった。薬品耐性と耐久性が向上し、メンテナンス工数も削減。

事例
仮設バイパス管接続用アダプターの短納期対応

緊急施工現場で必要となったPE管と異種管材との接続用部品を、既製品カスタム加工と溶接で対応。現地寸法に合わせた1点ものの即納体制が、施工遅延の回避に貢献。

このように、フジワラの柔軟な加工体制と小回りの利く製造体制は、一般の管材メーカーでは対応しにくい「例外案件」に対する「最後の砦」として機能しています。

また、ライスター社の押出し溶接機との連携技術により、現地組立や緊急対応など、現場主導の施工体制づくりにも貢献が可能です。

まとめ:インフラ更新の技術パートナーとして

上下水道分野におけるPE管の採用は、社会インフラの安全性・耐久性・持続性を高める鍵となります。その普及には、単に管材を供給するだけでなく、現場の課題に寄り添った「伴走型の技術提供」が不可欠です。

フジワラケミカルエンジニアリングは、切削・曲げ・押出し溶接を柱とした自由設計力と、現地施工・短納期対応を支える柔軟な製造体制を活かし、「できる方法」を一緒に考え、実行する技術パートナーとして、次世代の水道インフラを支えてまいります。