「地域」で出展する真意とは?SEMICON中四国パビリオンから見えた広域連携の力
半導体産業は、いま大きな転換期を迎えています。
技術の高度化、装置や材料への要求水準の上昇、サプライチェーンの複雑化、さらには地政学的リスクへの対応など、産業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。
こうした激動の状況下において、半導体産業はもはや一企業や一地域だけで完結できる産業ではなくなっています。
2025年12月、東京ビッグサイトで開催された「SEMICON JAPAN」。
世界中から関連企業や技術者が集まるこの大舞台において、中国経済産業局が中心となり、「中四国パビリオン」が初めて出展されました。
フジワラケミカルエンジニアリングも、その一員としてこの初出展の場に加わらせていただきました。
しかし、私たちがこの場に参加して得たものは、単なる「自社技術のPR機会」だけではありませんでした。
会場の熱気に触れ、他地域のパビリオンの取り組みを目の当たりにし、そして中四国の各企業が足並みを揃えて出展する姿を経験したことで、一つの明確な気づきがありました。
それは、「これからの半導体産業を支える基盤は、個社の努力を超えた『地域間連携』にある」ということです。
本コラムでは、中四国パビリオン初出展を通じて感じたことをもとに、半導体産業における地域間連携の重要性について整理していきます。
半導体産業は、県境を前提に動いていません
半導体産業は、非常に多くの工程と専門技術の組み合わせによって成り立っています。
製造装置、加工、洗浄、搬送、材料、部材、評価、保全など、それぞれの分野が高度に専門化され、分業によって支えられています。
これらの技術や企業は、県境を意識して配置されているわけではありません。
必要な技術、必要な設備、必要な人材がある場所と場所が、リレーのように自然につながりながらサプライチェーンを形成しています。
現場の感覚としても、「県内で完結している」という意識は決して強くありません。
一方で、産業振興や展示会出展といった枠組みでは、どうしても行政区分に基づいた整理が中心になりがちです。
ここに、産業の実態とのズレが生じているように感じてきました。
- 実際のサプライチェーンは県境を越えて網の目のように繋がっている
- 「県内で完結する」という意識は、現場の実感とは乖離がある
- 産業振興の枠組みを、この「現場の実態」に即したものへ変えていく時期に来ている
県パビリオンの意義と、もう一つの視点
今回の SEMICON JAPAN では、中四国エリアの中で山口県が県単位のパビリオンとして出展されていました。
県として主体的に半導体産業を発信されている姿は非常に印象的であり、県単位で取り組むことの意義をあらためて感じさせられました。
半導体産業の振興において、県単位で強みを磨き、発信していくことは非常に重要です。
各県がそれぞれの産業背景や企業集積を踏まえた取り組みを行うことは、地域産業の基盤を支えるうえで欠かせません。
そのうえで、今回「中四国パビリオン」という形が選ばれたのは、県単位の取り組みを否定するためではありません。
県の取り組みを尊重したうえで、もう一段広い視点から半導体産業の姿を示すという意味があったと感じています。
- 県単位の強みを磨くことは重要だが、それらを「束ねる」視点も不可欠
- 広域パビリオンは、県の取り組みを尊重しつつ、産業の全体像を示すための新しい表現方法
なぜ「中四国」という単位だったのか
半導体産業の実態を俯瞰すると、装置、量産、搬送、周辺技術、サプライヤーは、岡山、広島、山口、島根、鳥取、さらには四国各県にまたがって存在しています。
これらは個別に存在しているのではなく、相互に補完し合いながら一つの流れとして機能しています。
この構造は、県単位で切り取ると見えにくくなります。
しかし「中四国」という単位で束ねることで、複数県に広がる技術や企業のつながりが、一つのエコシステムとして可視化されます。
今回の中四国パビリオン初出展は、その姿を外部に示す試みであり、半導体産業の実態に即した表現方法だったのではないでしょうか。
- 「点」の集まりを「面(中四国エコシステム)」として見せることで、地域の実力が見えてくる
- 広域連携は、中四国のポテンシャルを世界に示すための実態に即した戦略
他地域パビリオンから受けた刺激
SEMICON JAPAN の会場には、北海道、東北、中部、九州といった各地域パビリオンも並んでいました。
各地域には、特定分野に特化し、現場で磨かれ続けてきたきらりと光る技術を持つ企業が数多く存在しており、それぞれの地域に明確な特色がありました。
重要なのは、どの地域が優れているかという比較ではありません。
それぞれの地域が異なる役割を担い、日本全体の半導体産業を支えているという点です。
地域同士が競うのではなく、補完し合うことで産業全体が成り立っていることを、改めて実感しました。
- 各地域には現場で磨かれた独自の強みがある
- 地域同士が補完関係にあることを認識することが、日本全体の競争力に繋がる
地域パビリオン交流会で見えた「継続」の価値
特に印象的だったのが、SEMICON JAPAN 初日の終了後に行われた地域パビリオン交流会です。
北海道、東北、中部、中四国の各地域が集まり、半導体関連企業だけが一堂に会しました。
その中でも、東北パビリオンの取り組みは強く印象に残っています。
東北パビリオンは、SEMICON JAPAN において10年近く継続して出展されており、その積み重ねの中で、独自のエコシステムを形成されていることが感じられました。
出展企業の皆さんは互いのことをよく理解されており、企業間の距離感も近く、非常に良い雰囲気で交流されていました。
単に同じ地域として集まっているのではなく、長年の活動を通じて「顔の見える信頼関係」が築かれているからこそ生まれるまとまりであると感じました。
県を超えた地域として一体感を持ち、継続的に発展してきたその姿は、地域単位で産業を育てていく一つの完成形のようにも映りました。
今回、初めて中四国パビリオンとして出展する立場から見て、東北パビリオンの歩みは、地域連携の進め方を考えるうえで多くの学びを与えてくれるものでした。
このような姿こそ、中国地域半導体関連産業振興協議会が今後目指していくべき一つの形であると感じています。
- 先行する東北パビリオンには、10年の積み重ねによる圧倒的な一体感がある
- 企業同士の「顔が見える信頼関係」こそが、産業振興の理想形の一つ
- 中四国も、継続的な活動を通じて「一つのチーム」を目指していくべき
企業努力だけでは越えられない壁
一方で、こうした地域間連携を、企業同士の自主的な努力だけで継続していくのは容易ではありません。
誰が全体をつなぐのか、どの地域とどのように連携するのか、そしてその枠組みをどう維持していくのか。
ここにはどうしても限界が生じます。
だからこそ重要になるのが、経済産業省、そして各経済産業局の連携です。
各地域の経済産業局同士が情報を共有し、地域と地域を橋渡しする。
その基盤があるからこそ、私たちは安心して地域を越えた交流に踏み出すことができます。
今回の中四国パビリオン初出展は、中国経済産業局が中心となって取り組まれたからこそ実現したものであり、広域連携の可能性を具体的に示した事例だったと感じています。
- 企業間の自主連携だけでは継続性に限界がある
- 経済産業局による「広域の橋渡し」が、企業の挑戦を支えるインフラとなる
- 行政のリーダーシップによって、広域連携の可能性が具体化される
おわりに
半導体産業は、特定の県や地域だけが強くなればよい産業ではありません。
地域と地域がつながり、日本全体として競争力を高めていくことが求められています。
SEMICON JAPAN における中四国パビリオン初出展は、その可能性を実感するための一つの実践でした。
今後、このような広域・地域間連携の取り組みが、継続的に発展していくことを期待しています。
あわせて読みたい:展示会レポート
今回の中四国パビリオンにおける当社の展示内容については、以下のページで詳しくご紹介しています。
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