PE溶接と自由設計で実現するオーダーメイド水槽:陸上養殖現場の課題を解決

近年、陸上養殖の現場では、育成対象魚種の多様化や施設の都市近接化、限られた敷地での生産性最大化などを背景に、設備設計に対する要求水準が一層高まっています。
「施設レイアウトに合った水槽が見つからない」「排水やメンテナンスの効率を改善したい」「水質を安定させながら作業性も両立させたい」といった声は、全国各地の養殖事業者から聞かれる共通の悩みです。
陸上で養殖環境を構築するからこそ、水槽の設置条件や形状、機能に対してより柔軟で現場密着型の対応が求められます。
しかし現実には、「既製品の中から選ぶしかない」「構造を変えたくても変えられない」といった、設備側の制約がネックとなるケースが少なくありません。
フジワラケミカルエンジニアリングは、PE(ポリエチレン)という素材と押出し溶接技術を駆使し、「その水槽、つくれますか?」という問いに、真っ向から「はい」と応える現場解決型の水槽づくりを提案しています。
【現場ニーズ】カタログにない水槽こそ、陸上施設が本当に求めていた
陸上養殖は、自然の水域とは異なり限られた設置スペースと設備配置の最適化が非常に重要になります。
敷地条件・給排水ライン・作業動線など、あらゆる要素が水槽設計に関わってくるため、「既製品の寸法に合わせてレイアウトを調整する」では本質的な最適化には至りません。
たとえば、施設のコーナーにL字型で設置したい、傾斜をつけて排水効率を改善したい、水槽内の水流設計を魚の習性に合わせて整えたい、センサーや観察窓を加えたい。
このようなニーズは多くの施設で共通していますが、既製水槽では応えられず、現場対応で乗り切るのが常でした。
- L字型で隅に収めたい
- センサーを取り付けたい
- 清掃しやすい構造にしたい
しかし、その「あと一歩」が実現できないことが、清掃頻度の増加、水質不安定、魚のストレス増加、作業効率の低下など、運用面におけるさまざまな課題を生み出します。
こうした背景から、「水槽を現場に合わせて設計する」こと自体が、これからの陸上養殖における設備改善のスタート地点だと、私たちは考えます。
こうした課題をカタログスペックで満たすのは難しく、手間やコストをかけて現場で調整するしかなかったのが実情です。
フジワラケミカルエンジニアリングは、そんな「あと一歩を実現する」水槽づくりに挑戦してきました。
その鍵を握るのが、ポリエチレン(PE)と押出し溶接という、規格に縛られない発想と技術の組み合わせです。
【自由設計】板材から立ち上げる、敷地・水流・作業に最適な構造
フジワラケミカルが製作する水槽は、あらかじめ決まった型に頼らず、PE厚板を元に設計どおりの形状を立体的に構築する方式を採用しています。
これにより、施設ごとの制約や魚種の特性に応じて、水槽のサイズ・形状・構造を最適化することが可能です。
- レイアウト対応
角地や壁際にL字型で収める、スペースを無駄なく活かすための変形デザインなどが可能。 - 排水効率の改善
底面に傾斜をつけたり、沈殿物を一方向に集めやすい構造を採用し、清掃の省力化・衛生性向上を実現。 - 機能設計
センサーの取付部、電気配線の導入口、内部の仕切り、水流誘導板なども設計段階で統合可能。 - 一体構造による安心感
パッキンやボルトを用いない接合で、漏水リスクを極限まで排除し、設備としての耐久性を確保。
このように、養殖現場の「こうしたい」を反映できる水槽を、設計の初期段階から形にすることができます。
【接合技術】押出し溶接が水槽構造に「信頼」をもたらす
フジワラケミカルの自由設計水槽を支えるのが、PE押出し溶接という確立された接合技術です。
これは、PE樹脂を高温で溶かしながらノズルで押し出し、接合部に重ねて溶着することで、素材同士を分子レベルで一体化させる加工法です。
- 厚物接合でも抜群の安定性
20mm以上の厚板同士でも高強度の接合が可能。水圧や荷重にも耐えうる構造を実現。 - 滑らかな接合面
凹凸がなく、バイオフィルムの発生リスクを抑え、衛生面にも配慮された仕上がり。 - 長寿命・高耐薬品性
海水や淡水、薬品洗浄環境に強く、経年劣化が少ない。 - 現地施工にも柔軟に対応
分割搬入したパネルを、狭小施設や搬入制限のある建屋内で溶着・組立可能。
「大型水槽は工場成形でないと無理」といった制限が、押出し溶接によって実際の現場に適応する形で覆されていくのです。
【素材性能】PE素材が陸上養殖に求められる条件を満たす理由
PE(ポリエチレン)は、水に強く、薬品に強く、軽くて丈夫という素材特性を持ち、陸上養殖の設備環境に非常に適しています。
FRPや金属製の水槽に比べて劣化や腐食のリスクが低く、水質への影響を極限まで抑える素材として実績があります。
- 軽量で割れにくい
建屋2階や限られた床荷重条件でも扱いやすく、作業負担も小さい。 - 耐薬品性・耐塩素性
薬液洗浄や残留塩素処理にも耐える。長期運用を前提とした施設に最適。 - 異物が出にくい構造
FRPに見られる繊維の飛散がなく、水質汚染のリスクを大きく低減。 - 食品衛生法適合グレードも対応可能
食用魚種への対応やHACCP準拠にも寄与。 - リサイクル性が高い
廃棄時の環境負荷が小さく、SDGs視点でも選ばれる素材。
陸上施設にとって、「安心して長く使える水槽」であることが、PEの最大の価値です。
【導入成果】自由設計水槽がもたらした、運用現場の変化
すでに多くの陸上養殖施設で、自由設計・押出し溶接によるPE水槽が導入され、明確な成果を挙げています。
- 清掃作業が1/3に短縮
L字型水槽と底面傾斜による自然排水設計により、沈殿物の集積効率が向上。作業の簡略化と衛生維持に貢献。 - センサー・補強一体設計で工期短縮とトラブル減
機器設置部と補強リブを溶接一体化し、後加工不要・精度安定・現場手間の削減を実現。 - 魚の行動特性に合った水流設計で成長率向上
壁面の形状や内部構造を調整し、水流の偏りを抑制。魚のストレスを低減し、成育環境を最適化。
これらの成果は、単に水槽の「形」を変えたことによるものではありません。
その設計の自由度こそが、運用面での改善につながる最も大きな要因となっているのです。
【提案力】「製品ではなく解決」を提供する水槽メーカーとして
私たちフジワラケミカルエンジニアリングは、水槽という「製品」を提供するのではなく、現場の「課題解決」を提供する会社でありたいと考えています。
設計段階の構想から、現地の物理条件、作業性や管理の運用フローに至るまで。
水槽が担う機能を正しく理解し、設備全体のなかで最も適した構造や素材の選定を提案できる体制を整えています。
- 設置スペースの制約が多い
- レイアウトに合わせた形状が必要
- 衛生基準や自治体の設備要件に対応したい
- ヒアリング段階から相談に乗ってほしい
こうした要望に、一社一様の「最適解」でお応えしています。
結び:陸上養殖の未来に、「つくる水槽」という選択肢を
陸上養殖は、地球環境への配慮、水資源の有効活用、都市型生産システムへの移行など、多くの期待を背負った産業です。
その成否を左右するのは、単に育成ノウハウだけでなく、それを支える設備の質です。
PE溶接 × 自由設計というアプローチは、施設の可能性を制限する「既製品中心の発想」から、現場課題に応じて「形から設計する発想」へと切り替える大きな転換点です。
「この形、できますか?」という問いに、確かな技術と柔軟な姿勢で応え続けること。
それが、陸上養殖の未来を支える私たちの使命です。