東と西をつなぐ交点:半導体装置産業の新拠点としての岡山

日本の半導体関連産業は、再び大きな注目を集めています。九州では製造拠点の整備が急速に進み、関西では装置・材料技術の開発が深化しています。こうした動きの中で、装置産業や関連技術を担う企業の皆さまにとっては、新たな立地戦略の検討が重要なテーマとなっているのではないでしょうか。
そうした状況下で、九州と京都のほぼ中間に位置する岡山は、注目に値します。
日本列島の西日本地域において、九州と近畿という二大拠点を結ぶ地理的な中継点は限られていますが、岡山はその中でも、交通網・災害リスク・産業インフラという三つの要素が高いレベルで融合している地域です。特定の企業名を挙げるまでもなく、装置メーカーや関連企業にとって重要なエリアである九州と関西の間に位置しているという点においても、岡山は地理的にも戦略的にも非常に魅力的であると言えます。
私たちフジワラケミカルエンジニアリングは、岡山に本拠を置くプラスチック加工会社として、長年にわたり産業用装置部品の製造に携わってきました。その立場から、岡山は今後、半導体装置産業の西日本拠点として大きな可能性を秘めた地域だと確信しています。

岡山の歴史的背景:古代からつなぎの地
岡山は古代の吉備国として、山陽道の要衝でした。畿内と九州を結ぶ軍事・物流ルートの中間にあり、都からの視点では「西の玄関口」として常に注目されていました。吉備は畿内に次ぐ大国であり、朝廷からも独自の存在として意識されていました。古墳時代の遺構や伝承にも、その影響力の大きさが残されています。

江戸時代には西回り航路の陸揚げ地となり、城下町岡山は交通と物資の集積地として繁栄を極めました。明治以降は山陽本線、昭和期には国道2号線や山陽自動車道が整備され、戦後は山陽新幹線と中国自動車道が開通しました。現在に至るまで、日本の大動脈に組み込まれ続けています。近代交通の整備とともに、岡山は“物流と人の流れの要所”としての役割を進化させてきました。

こうした歴史的文脈は、単なる過去の話ではなく、現代の立地選定や供給網の構築においても重要な視点となります。「歴史的に結ばれてきた場所は、現代でも繋がりを生みやすい」。これは地政学上のひとつの真理です。
こうした立地は、広域にまたがる供給網を前提とした半導体装置産業にとって、極めて合理的であると考えています。

立地の優位性と装置産業を支える産業インフラ
岡山は、九州と関西のちょうど中間に位置しており、いずれの地域からも新幹線や高速道路を活用することで、おおむね2時間圏内に収まる立地にあります。山陽新幹線の岡山駅には、「のぞみ」「みずほ」「さくら」などの主要列車がすべて停車し、西日本における高速移動の結節点として非常に高い利便性を誇っています。
加えて、中国・四国・九州方面を結ぶ幹線道路網も整っており、装置や大型機材の搬出入にも適した物流インフラが整備されています。このような立地は、広域に取引先・製造拠点を持つ企業にとって、拠点間の移動効率や物流コストの最適化に直結する大きな強みとなります。
さらに岡山県内には、水島臨海工業地帯を中心に、重化学工業・機械加工・プラスチック製品といった多様な産業が集積しています。これにより、装置製造に不可欠な精密部品・配管部材・外装構造などの外注・協力体制を、県内で完結できる可能性が高まります。私たちフジワラケミカルエンジニアリングも、長年にわたりこの地の加工ネットワークの一員として装置関連部材の供給を担ってきました。
また、近年ではスマートファクトリー対応や環境配慮型設備の整備も進んでおり、次世代装置の製造拠点としての条件も整いつつあります。工業団地の整備状況や用地確保の容易さも含め、岡山は装置産業の拠点展開において非常に実行性の高い候補地といえるでしょう。

岡山・主要都市間の移動時間比較表
災害リスクの低さ:安定供給への貢献
製造業にとって、自然災害リスクの少なさは、立地選定における極めて重要な要素です。特に精密機械や装置製造の分野では、わずかな地震や浸水でも甚大な損害につながることから、自然災害の少ないエリアが強く求められます。
岡山県は全国でも有数の地震発生数の少ない地域であり、土砂災害や水害のリスクも比較的低く、BCP(事業継続計画)の観点からも非常に安定した環境にあります。さらに、「晴れの国おかやま」の異名のとおり、年間降水量も少なく、河川の氾濫や大規模な土砂災害の発生リスクも比較的低い土地柄です。
私たちも、日々お取引先に対して「止まらない供給体制」をご提供できるよう、この岡山の安定した地盤に支えられてまいりました。こうした環境であればこそ、装置産業の中核拠点としての安心感をご実感いただけるものと考えています。

出典:第3部 中小企業・小規模企業経営者に期待される自己変革(中小企業庁)
人材育成と地域力:ものづくりの土台を支える
製造業や装置産業において、モノをつくるのは人です。いくらインフラや用地が整っていても、現地で技術を担う人材が確保できなければ意味がありません。
岡山県には、岡山大学、岡山理科大学、岡山高専、ポリテクセンターをはじめとする理工系人材の育成機関が多数存在し、ものづくりを支える技術者の安定供給が可能です。当社も地元採用と社内育成を軸に、長年にわたり人材力を蓄積してきました。
また、企業と教育機関の地域連携も活発で、産学連携による即戦力育成が進んでいます。進出された企業様にとっても、将来の人材確保において有利な地域といえるでしょう。
順位 | 都道府県名 | 人口10万人当たりの大学・短大数 |
---|---|---|
1 | 京都 | 1,686 |
2 | 石川 | 1,611 |
3 | 岡山 | 1,396 |
4 | 東京 | 1,268 |
5 | 新潟 | 1,254 |
6 | 山梨 | 1,247 |
7 | 青森 | 1,245 |
8 | 岐阜 | 1,233 |
9 | 秋田 | 1,183 |
10 | 群馬 | 1,150 |
出典:101の指標からみた岡山県(令和6(2024)年版)(岡山県)
結びに:「交差点」から「支える地」へ
岡山は、単なる地理的中継点というだけではありません。交通インフラ、災害リスクの低さ、産業基盤、人材育成環境といった、ものづくりを支える複数の要素がバランス良く整った地域です。その総合力の高さこそが、岡山の最大の魅力であると私たちは考えています。
今後、半導体装置メーカーをはじめさまざまな装置メーカーの皆さまが西日本全体をカバーする拠点の構築を検討される際には、生産・保守・教育・物流という四つの観点から見ても、岡山は十分に候補地となり得るはずです。政府や自治体による企業誘致の支援が強化され、民間企業の進出意欲と重なったとき、岡山は「東と西をつなぐ地」から、「ものづくりを支える地」へと大きく進化していく――その可能性を、私たちは確信しています。
産業を支える土壌がここにあります。岡山で、ともに未来を築いていける企業さまとの出会いを、心よりお待ちしています。
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