プラスチック加工による産業装置筐体製作のご提案:現場起点の確かなものづくり

製造装置や研究機器、実験設備の「筐体」は、単に装置内部を保護する「箱」にとどまらず、作業性・安全性・保守性など多様な価値を現場にもたらす存在です。近年は生産現場の自動化や装置の多機能化、より厳しい衛生・安全基準が求められることで、「筐体」に求められる水準も大きく進化しています。

また、クリーンルームや化学プラント、半導体・医薬・食品など異物混入や薬液腐食、静電気対策が不可欠な分野では、従来の金属製から「プラスチック筐体」への置き換えが進んでいます。現場ごとのリアルなニーズに応える「最適な筐体づくり」…その主役こそが、プラスチック加工技術です。

本コラムでは、プラスチック製筐体が産業装置や実験設備においてどのような価値を発揮するのか、その利点や採用シーン、さらにフジワラケミカルエンジニアリングの強みや加工事例を通じて詳しく解説しています。

従来の金属筐体に比べて、薬液耐性・軽量性・設計自由度・絶縁性などの面でプラスチックが持つ優位性を整理し、現場ごとの課題や高度な衛生・安全要件への対応力にも焦点を当てました。また、素材選定の考え方や加工技術、現場目線のフィードバック体制、Q&Aを交えて、装置設計者や現場担当者が安心して相談・発注できるポイントを紹介しています。プラスチック加工による筐体製作の最新動向と、実用的な選定・設計・発注のコツが分かる内容です。

プラスチック筐体が選ばれる理由:金属一択の時代は終わった

装置筐体といえば金属製が主流ですが、近年では以下のような現場でプラスチック素材の優位性が注目されています。

  • 薬液環境下(酸・アルカリ・溶剤など)の装置や配管
  • クリーンルーム用途(静電気・粉塵対策が重要)
  • 軽量化や持ち運びが必要な装置・設備
  • 内部視認性・安全性が求められる作業領域
  • 電気絶縁や帯電防止が必須の環境

さらにプラスチックは加工自由度が高く、オーダーメイドや特殊構造、短納期対応など「装置開発のスピード」を左右する柔軟性も魅力です。

現場でよくある課題と悩み

実際の現場では、「どの素材を選べば長持ちするのか」「図面通りに作ったはずなのに現場で使いにくい」「思い通りの形や構造がなかなか実現できない」など、装置開発には多くの課題や悩みがつきものです。また、コストや納期、加工会社との意思疎通がスムーズにいかず、思わぬ手戻りや調整が必要になることも少なくありません。

設計者や現場担当者からは…

「耐薬品性と透明性を両立したい」
「配線スペースを広くとりたい」
「メンテナンスや清掃がしやすい構造にしたい」
「複雑な形状だけど、図面通りにつくれるだろうか?」

といった声が日々寄せられています。

フジワラケミカルエンジニアリングの強みと実績

こうした現場の声に真正面から向き合い、課題解決のパートナーとして積み重ねてきたのが、私たちフジワラケミカルエンジニアリングの強みです。

①半導体分野で磨いた確かな技術力

当社は、創業以来、半導体製造装置(特に洗浄装置)の筐体製作を長年にわたり手がけてきました。この分野は微細な異物混入や薬液耐性、クリーンルーム適性など、極めて高い品質と精度が求められる現場です。そこで培った素材選定ノウハウや加工・接合の精度管理力、現場トラブルをもとにした改善提案力は、他分野の装置でも高く評価されています。

②一貫生産体制と柔軟なカスタム対応

当社では、図面・仕様打ち合わせから、切削・溶接・曲げ・接着といった各種加工、最終組立、検査・仮組み、納品・現地対応まで、すべて自社で一貫して対応しています。そのため…

  • 仕様変更や設計変更への迅速対応
  • 小ロット・多品種や短納期案件にも柔軟に対応
  • 現場立会いや仮組み確認など、コミュニケーション重視の体制

が可能となっています。

③豊富な導入実績と現場フィードバック

これまでに手掛けた主な事例は…

  • 半導体洗浄装置用の大型PVC筐体
  • 医薬品・食品工場向けの帯電防止アクリルカバー
  • 研究・実験装置向けの軽量PP筐体や可動カバー

など、高度な衛生性・耐薬品性・強度・加工精度が求められる装置で多数の実績があります。

また、お客様からは…

「現場でのメンテナンス性を考えた細やかな設計提案がありがたい」
「図面では分からなかった使い勝手まで考慮してくれた」
「難易度の高い溶接や特殊素材の加工も安心して任せられる」

といった声を多数いただいています。

④設計者・現場担当者との「共創」スタイル

私たちは単なる「加工業者」ではなく、設計段階から「現場目線で課題解決に伴走するパートナーでありたいと考えています。

  • 構想段階からの素材・加工法相談
  • 現場課題のヒアリングと仕様へのフィードバック
  • 使い勝手・保守性・安全性を踏まえた設計上の工夫提案

こうした「共創の姿勢」こそが、長年多くのお客様に選ばれてきた理由です。

素材特性と用途事例

当社では、下記のような素材を用途に応じて使い分けています。

素材主な特性主な用途例
PVC(塩ビ)耐薬品性・加工性・コストバランス半導体洗浄装置、薬液配管装置
PP(ポリプロピレン)軽量・耐衝撃・耐薬品性食品・医療系設備カバー
PVDF高純度対応、耐熱・耐薬品性極めて高製薬設備、高機能化学装置の筐体
アクリル高透明性、美観、加工性観察窓、安全カバー
帯電防止グレード静電気・粉塵対策クリーンルーム用保護カバー

素材ごとに「薬品耐性」「透明性」「帯電防止」「強度」など異なる特性があるため、用途や使用環境に合わせた選定が装置性能や寿命に直結します
「こういう薬品を使う」「この部屋は60度になる」「頻繁に移動する」など、現場情報の共有が最適な素材選びにつながります。

設計連携と現場重視の製作体制

当社では、設計業務そのものはお客様側または協力設計会社によって行っていただく形をとっております。一方で、製作を進めるにあたっては、以下の観点から図面・仕様に対する事前確認やフィードバックを実施しています。

  • 加工性・組立性に無理のない構造か
  • 材料厚みや溶接箇所の強度が適正か
  • メンテナンスや清掃を考慮した構造になっているか
  • 配線・配管スペースなどに余裕があるか
  • 設置環境(搬入経路・設置スペース)に応じた分割・組立構造がとれているか

製作図面の精度をさらに高め、「図面通りにつくったが、使い勝手が悪い」という事態を未然に防ぐことが重要です。当社は、図面の仕様に忠実であることに加え、「現場で使いやすい形」になるよう細部にまで配慮して対応いたします。

加工技術と社内体制

当社のプラスチック加工は、全て社内で一貫対応しています。対応可能な工法は以下の通りです。

  • ホットガス溶接:筐体の一体成形や強固な構造部の接合に使用
  • 曲げ加工:直線的な折り曲げ構造やフランジ部の形成
  • 接着加工:透明材や開閉部などに美観・密着性を重視して使用
  • 機械加工:切削・穴あけ・面取り・溝加工など細部の精度処理
  • 透明接合処理:アクリルやPCなどの視認部を美しく仕上げる

製作内容によっては、仮組みや試作の対応も可能です。量産前に現物を確認したい場合や、既存装置との整合性を確認したい場合にも柔軟に対応いたします。

製作事例

以下は、当社の産業装置向け筐体製作の実績の一例です。

①半導体洗浄装置用大型筐体(PVC製)

  • 薬液が飛散する環境下での使用を前提とした設計
  • 一部に透明窓を配置し、安全性とメンテナンス性を確保
  • 配線・配管の取り回しに合わせて、開口部や補強部を細かく調整

②医薬品製造装置用カバー(帯電防止アクリル)

  • クリーンルームで使用する装置に対し、静電気・粉塵対策を施した構造
  • 定期清掃時の脱着が容易となるよう、専用治具と組み合わせて設計
  • 美観・透明性を維持しながら、高強度の接合を実現

③実験装置用移動筐体(PP製)

  • キャスター付きの可動構造で、作業スペースに応じた柔軟な運用が可能
  • 分解・組立が簡便に行える構造とし、搬送時の取り扱い性を向上
  • 軽量であるため、作業者一人でも扱える設計

設計者の皆様へのご提案

設計業務において、「構想はあるが製作が難しい」「既製品では用途に合わない」「図面通りに作れる協力先が見つからない」といった課題に直面することは少なくありません。

当社では、以下のような立場で設計者の皆様を支援します。

  • 製作の現実性に即したフィードバックとアドバイス
  • 素材選定や構造設計に関する実用的なご提案
  • 現場環境や運用方法までを見据えた仕様検討
  • 変更や追加仕様にも柔軟に対応する姿勢

私たちが目指しているのは、「設計図を正確に加工する」だけではなく、「図面の意図を理解し、信頼して任せられる製作パートナー」になることです。

「図面がない段階から相談できるか?」「この構造は加工できるか?」といったご質問にも、豊富な経験と実績でお応えします。どうぞお気軽にご相談ください。

よくあるご質問(Q&A)

樹脂材料の選定で、まず何を考えるべきですか?

「用途・環境・目的・コスト・加工性」を総合的に整理します。薬液や温度、クリーンルーム使用、静電気対策など、現場条件を洗い出すことで最適な素材を選べます。

耐薬品性が必要な場合、どの素材を選べば良いですか?

プ薬品の種類や濃度、温度、接触時間によりますが、一般にPVDF、PP、PEは多くの酸・アルカリに強く、PVCは有機溶剤には弱い傾向です。耐薬品表や実際のテスト評価を推奨します。

強度が必要な構造の場合、どの材料が適していますか?

ナイロン(PA)、POMは高強度・耐摩耗性に優れます。UHMW‑PEは高い衝撃吸収性と柔軟性があります。目的や環境による使い分けが重要です。

加工しやすい樹脂材料はどれですか?

PPやPEは切断・熱溶接がしやすく、PVCは溶接性は良いですが加熱時のガスに注意。POMやナイロンは切削加工には良いですが溶接には不向きです。

プラスチック加工図面で特に注意すべき点は?

寸法単位・投影法の明記、材料記号・品番・色・グレード指定が重要です。また、公差や面取り指示、溶接・接着の方法まで具体的に記載しましょう。

寸法公差や温度変化はどう扱うべきですか?

JIS規格などに基づいた一般公差を記載し、重要寸法には個別指定を。プラスチックは熱膨張が大きいので、環境温度の影響を必ず考慮しましょう。

曲げ加工や透明接合など特殊な加工はどのように指示すべき?

R曲げやヒーター熱処理の有無など、加工条件を明確に注記。観察窓や視認部には高透明度・バリなし仕上げの指示も効果的です。

製作途中や現場での調整対応はできますか?

はい。仮組みや現場立会い、仕様変更にも柔軟に対応可能です。設計者・現場担当者と連携し、実際の使いやすさまで一緒に考えます。

総まとめとアドバイス

  • 素材・設計・加工の各段階で、用途・環境・目的に応じた明確な選定・指示を行うことが品質・納期・コストの最適化に直結します。
  • 素材選びは「TPO重視」、図面設計は「プラスチック特有の注意点重視」で失敗を未然に防ぎましょう。
  • 現場ごとの課題や“使い勝手”までを見据えた設計・加工体制をパートナーと一緒につくることが、より良い装置づくりの近道です。
  • 分からないことは早めにご相談ください。「図面がない」「素材選定から相談したい」など、どんな段階でもご対応可能です。

「プラスチック筐体で現場を変えたい」「他社で断られた構造にも挑戦したい」
そんなご要望も、ぜひ私たちフジワラケミカルエンジニアリングにご相談ください。
設計と製作が一体となることで、現場の「理想をカタチにします。