【プラスチック加工の基礎③】金属と何が違う?プラスチックのマシニングセンタ加工

近年、装置部品や構成材の素材として、エンジニアリングプラスチックの活用が急増しています。軽量で絶縁性があり、薬品にも強く、そして成形だけでなく切削にも対応できる多様性が、ものづくりの現場で評価されています。特に精度と安定性が求められる半導体装置分野では、プラスチック切削加工の重要性が年々高まっています。

その中でも、マシニングセンタを使ったプラスチック加工は、繊細な形状や寸法精度が求められる部品の製作において不可欠な手段です。プラスチックをマシニングで加工するにあたって、金属との違いを理解するための「基礎となる考え方」に焦点をあててご紹介します。具体的な切削条件や工具選定の詳細は次回以降の応用編に譲り、まずは素材特性に適した基本的な加工視点をつかむことを目的とします。

このコラムでは、以下のポイントについて解説しています。

このコラムでわかること
  • 金属と異なるプラスチック加工の基本視点
    切削条件や前処理の有無など、金属とは異なる加工上の注意点がある。
  • 素材ごとに異なる切削性と適した加工条件
    POM、PVC、PEEKなど、樹脂ごとの特性を理解し、適切な条件設定が必要。
  • マシニングセンタでの加工環境と工夫
    設備は共用可能だが、固定方法や清掃・廃棄物処理に樹脂特有の対応が求められる。
  • 外観品質への意識と仕上げ工程の重要性
    透明樹脂や半導体向け部品では、切削痕や白化のない美しい仕上げが求められる。
  • 寸法安定性と経時変化への配慮
    吸水や熱膨張による変形リスクに対応するため、保管・加工タイミングの管理が重要。

プラスチック切削加工の思考転換

プラスチックは、マシニングセンタで加工できるという点では金属と共通していますが、素材特性に大きな違いがあります。鉄やアルミと同じ条件・感覚で加工を始めると、予期せぬ不具合が起こることも少なくありません。

たとえば、切削スピード。樹脂は鉄に比べて切削抵抗が低いため、送り速度や主軸回転数を2倍以上に設定できるケースが多いです。しかし、スピードを上げすぎると加工熱が蓄積し、工具に切粉が溶着する「溶着現象」が起こる危険性があります。

また、切り込み量についても「意外と深く入れても削れる」と現場では言われます。POMやMCナイロンなど、剛性のある素材は安定して深切削が可能ですが、アクリルやPVCのように熱や振動に弱い素材では反りや仕上げ不良が出ることもあります。

さらに、鉄などでは酸化被膜除去などの前処理が必要なケースが多いですが、プラスチックでは素材のまますぐに加工に入れるというメリットもあります。加工前準備が簡潔になる分、段取り時間の短縮にもつながります。

このように、金属とプラスチックの加工には“似て非なる”要素が多く存在します。「同じ設備でも、素材に応じて考え方を切り替える」ことが、プラスチック加工を安定させるために重要です。

Point
  • 切削スピードは金属の2倍以上で設定できるが、熱による溶着リスクに注意
  • 一部の樹脂は深切削も可能だが、素材によっては反りや仕上げ不良の懸念あり
  • 金属のような前処理(酸化被膜除去)が不要で、加工準備が簡略化される

マシニングセンタで加工できるプラスチック素材とその特徴

フジワラケミカルエンジニアリングでは、日々さまざまなプラスチック素材をマシニングセンタで加工しています。特に多いのは以下のような素材です:

  • POM(ジュラコン):高精度加工がしやすく、初めての樹脂加工におすすめ。機械要素部品にも使用されます。
  • PVC(塩化ビニル):当社の得意素材であり、耐薬品性・加工性ともに優れ、半導体装置部品に多数使用されています。
  • PEEK:高価ですが耐熱性と強度に優れており、医療・半導体分野に適しています。
  • MCナイロン:耐摩耗性が高く、搬送部品などにも多用されます。
  • アクリル:透明で美観性が高いが、熱に弱く、切削条件には注意が必要です。

素材ごとに「加工しやすさが異なるため、まずは実績のある代表素材からスタートすることをおすすめします。特にPVCは当社が長年のノウハウを蓄積しており、安定した品質での加工が可能です。

Point
  • POM・MCナイロン・PVCなど、特性に応じた代表素材が加工対象になる
  • 素材ごとの「加工しやすさ」が異なるため、適材適所の選定が重要
  • 特にPVCは加工実績が豊富で、フジワラの強みを発揮できる素材

設備はそのままで始められる?マシニングセンタでの加工環境

金属加工の業者様から「今あるマシニングセンタで樹脂も削れますか?」という質問をよくいただきます。結論から言えば、基本的な設備はそのまま使えます。ただし、プラスチック加工ならではの注意点を押さえておく必要があります。

たとえば、プラスチック加工では水溶性の切削油を用いたオイルミストが使用されるケースが多く、加工後に水洗いできるため洗浄工程が簡便になるというメリットがあります。また、樹脂の切粉は軽量ではあるものの空中に舞うことは少なく、静電気対策も含めて清掃は比較的容易です。ただし、鉄やその他金属の切粉とは異なり、樹脂切粉はさまざまな種類の素材が混在するためリサイクルが難しく、分別処理ができない場合が多いため、通常は産業廃棄物として埋め立て処理されます。

また、保持方法も見直しが必要になる場合があります。樹脂は柔らかく、強く締め付けすぎると変形や割れの原因になります。ゴムパッドの併用や、吸着チャックの導入など、柔軟な固定手法が求められます。

機械そのもののスペックよりも、素材に応じた加工環境の準備が鍵となります。

Point
  • 基本的には金属用マシニングセンタでも樹脂加工が可能
  • 樹脂切粉は空中に舞うことが少なく清掃も比較的容易だが、混在しやすいためリサイクルが困難で産業廃棄物として埋め立て処理される
  • 固定力のかけすぎによる変形を防ぐための工夫(ゴムパッド・吸着など)が必要

表面仕上げと見た目への意識が必要

鉄加工では寸法精度が重視される場面が多い一方で、プラスチック加工では外観の美しさが評価対象になることも少なくありません。特にアクリルのような透明素材では、仕上げの美しさが製品価値を大きく左右します。

また、半導体装置向けのPVC部品でも、切削面の粗さ・切削痕・白化など、見た目に関わる要素が信頼性やブランドイメージに直結することがあります。使用される環境がクリーンルームや目視確認の多い現場であれば、なおさら重要です。

このため、バリ取りや面取り処理、研磨仕上げ、加工順序の工夫など、「見た目品質」も意識した加工工程が求められます。

Point
  • プラスチック加工では仕上げの美しさが製品評価に直結する場面がある
  • アクリルや半導体向けPVCなどは特に切削痕・白化に注意が必要
  • 面取りや加工順序など、外観を意識した工程設計が重要

寸法安定性と経時変化への配慮

プラスチックは金属と異なり、吸水性や熱膨張、時間経過による変化を受けやすい素材が存在します。たとえばナイロン(PA)系やPEEKなどは吸水性があり、環境湿度や加工後の保管条件によってわずかな寸法変化が生じることもあります。

また、使用温度が高い環境での寸法安定性も、設計段階から考慮する必要があります。切削直後の測定値と、数日後や使用環境下での寸法に差が出ることがあるため、加工タイミングや素材調湿の管理も重要です。

当社では、こうした寸法変化を想定した加工公差の調整や、納品前の環境管理などにも対応しており、長期的に安定した性能が求められる部品にも安心してご依頼いただけます。

Point
  • 一部の樹脂は吸水・熱・経時変化によって寸法が変わる可能性がある
  • 寸法公差の厳しい部品では使用環境や加工タイミングの考慮が重要
  • 調湿や保管条件を含めた一貫管理が品質安定の鍵

フジワラケミカルエンジニアリングの現場対応とまとめ

当社では、プラスチック加工に初めて取り組まれる方々からのご相談を数多くいただいています。現場では「切削スピードが速い」「前処理なしですぐ加工に入れる」「切り込みが思ったより深くできる」といった声が多く、素材特性への理解がスムーズな加工へつながることを実感しています。

こうした「やってみないとわからない違い」を、私たちは社内でノウハウ化し、素材・形状・公差・数量ごとに最適な条件を選定できる体制を整えています。とくにPVCに関しては、半導体装置部品として厳しい要求にも応えるべく、社内で検査体制も強化し、品質とスピードの両立を実現しています。

金属加工と比較しながら、プラスチックに適した加工視点を取り入れることが、品質と安定性を両立させる鍵になります。もし新しい素材への対応や、精度の高い樹脂部品加工をご検討であれば、ぜひフジワラケミカルエンジニアリングまでご相談ください。